ガスの性質・利用法 乙種化学・乙種機械 保安管理

不燃性ガス

1-1.二酸化硫黄(SO2)
①色・臭い・種類:無色、強い刺激臭、不燃性・毒性ガス
②重さ:64.0g/mol
③溶解性:水に溶けると弱い酸性を示します。
④製造方法:
硫黄の完全燃焼やセメント製造の際、副生成物として製造されます。
⑤その他特徴:
a) 天然には火山の噴気中に含まれている
b) 液化二酸化硫黄は純粋であれば、電気伝導度は小さいが、溶解性の塩を少量加えると電気伝導度が非常に高くなる。
⑥用途
a) 変圧器、ガス遮断器等に用いられます。

1-2.ヘリウム(He)
①色・臭い・種類:無色、無臭、不活性ガス
②重さ:4.0g/mol(水素に次いで軽い)
③溶解性:水にほとんど溶けない
④製造方法:
北米・カナダ等のHeを0.2~3%含む天然ガスから液化、吸着等により回収。
(我が国では全量輸入。(参考日本のガス田にも若干含有))
⑤その他特徴:
a) ヘリウムは、あらゆる物質の中で沸点が最も低い(-268.9℃)。
⑥用途
a) ヘリウムリークディテクタで漏れの検知。気球用ガス。
b) ガスクロ分析用キャリヤーガス、レーザー機器の発振管、半導体・光ファイバー製造。
c) 医療用の磁気共鳴画像診断装置(MRI)の超伝導マグネットの冷却

1-3.アルゴン(Ar)
①色・臭い・種類:無色、無臭、不活性ガス
②重さ:39.9g/mol
③溶解性:不溶
④製造方法:
沸点が酸素と窒素の間にあり、空気液化分離装置の精留塔から抜き出して、再精留などにより得ている。
⑤その他特徴:
a) 空気中に1%近く存在する。窒素、酸素に次いで3番目に多く、希ガスの中では最多。
⑥用途
a) 電球、放電管用封入ガス
b) アルミニウム、ステンレス鋼の溶接用保護ガス(酸化防止)
  
1-4.ネオン(Ne)
①色・臭い・種類:無色、無臭、不燃性ガス
②重さ:20g/mol
③溶解性:不溶
④製造方法:
空気液化分離の副生ガスだが、液化されずにネオンを高濃度に含む窒素ガスを回収し、さらに低温で液化分離し精製。
⑤その他特徴:
a) 沸点は-246.0℃。
⑥用途
a) ネオンサインなどの管球用ガスとして用いられる。  

1-5.窒素(N2)
①色・臭い・種類:無色、無臭、不活性ガス
②重さ:28g/mol(空気(28.9g/mol)より軽い)
③溶解性:水にほとんど溶けない
④製造方法:空気液化分離法、PSA
⑤その他特徴:
a) パージガス、雰囲気ガス、キャリヤーガス。
b) 空気の主成分で、約78%含まれる。沸点は-195.8℃
c) 原子状Nは活性が高く、高温では種々の反応を起す。
⑥用途
高温高圧で水素と反応して、アンモニアを生成する。

1-6.二酸化炭素(CO2)
①色・臭い・種類:無色、無臭、不活性ガス
②重さ:44g/mol
③溶解性:水によく溶ける
④製造方法:石油化学プラントから排出されたものを精製する
⑤その他特徴:二酸化炭素は吸いすぎると頭痛・眩暈などを催し、その後意識を失う危険なガスです。冷却して固体となったものはドライアイスとして用いられています。
a) 大気圧で低温にすると、液化せずに固体のドライアイスとなる。
b) 臨界温度31℃であり、冷却して加圧すると液化CO(液炭)。
c) Mg、NaなどはCO中で激しく燃焼。Mg + 1/2CO2 = MgO + 1/2C + 405kJ
d) 水分を含むと炭酸を生じ、弱酸性を呈して炭素鋼を腐食する。
e) 窒息性であり、かつ2%以上の高濃度では毒性を有する。
⑥ 用途
a) 最大用途:尿素及びソーダ灰(無水炭酸ナトリウム)の製造原料。
b) 清涼飲料水、消火剤、ドライアイスは寒剤・保冷用。
c)超臨界抽出溶剤、香料、カフェイン、薬用成分等の抽出。
c) 製造法石油等からの水素製造の際の副産物。ドライアイス:液化CO2を噴出→雪状ドライアイスプレス成形

1-7.フルオロカーボン
①色・臭い・種類:無色、わずかに芳香あり、不燃性ガス/液体
②重さ:脂肪族炭化水素をフッ素で置換した混合物の総称のため分子量はない
③溶解性:水に溶けにくい
④製造方法:炭化水素等をフッ化水素やフッ素によってフッ素化する
⑤その他特徴:
a) 大気寿命の短い代替フロン(ハイドロクロロフルオロカーボンHCFCやハイドロフルオロカーボンHFC)が登場したが、HCFCのオゾン層の破壊能力はゼロではなく、2019年末で生産全廃予定。HFC、PFCは温室効果を持ち、地球温暖化防止の観点から排出抑制。
b) フッ素原子が多いほど熱的に安定。HCFCは分子中の水素原子の数が多くなると可燃性を示す。HFCはH/F≧1で可燃性を示す。
c) 火炎で加熱されると、分解して有毒なHFやHCIを発生するので吸入しないよう注意。
⑥ 用途
a) クロロフルオロカーボン(CFC)は不燃性で、人体に対して一部を除き無毒であり、冷媒、洗浄剤、噴射剤、発泡用に広く使用されていた。しかし、オゾン層破壊物質として1995年に製造は廃止。

可燃性ガス

2-1.水素(H2)
①色・臭い・種類:無色、無臭、可燃性ガス
②重さ:2.0g/mol(元素の中で最も軽い)
③溶解性:水に溶けにくい
④製造方法:
a) 炭化水素分解(CmHn → CO + H2 = 合成ガス)
 水蒸気改質法(ICI法):Ni触媒、部分酸化法(テキサコ法)、CO転化反応(CO+H2O)
b) 副生水素の回収
 ナフサ接触改質装置、コークス炉ガス、食塩電解
c) 水原料
(1) 石炭のガス化 C + H2O → H2 + CO
(2) 水の電気分解 H2O → H2 + 1/2O2
⑤その他特徴:
a) 還元性が強く、高温で金属の酸化物または塩化物と反応して金属を遊離する。
b) 水素と酸素の混合気体を点火すると爆発し大きな音をたてて水蒸気になり、水素爆鳴気という。
c) ガスの中で最小の密度であり、拡散速度も最も大きく、熱伝導率も大きく、逆に粘度は小さい。
d) 水素原子は金属結晶格子の中に侵入して材料強度などが低下する水素脆化を起すことがある。 鋼に対しては高温高圧で鋼中の炭素と反応してメタンを生成し、脱炭作用による水素侵食を起こす。
⑥用途
a) 製造原料 (アンモニア・メタノール等、 水素を含む化合物)
b) 石油工業 (脱硫、 精製、 重質油の分解・低分子化)
c) 半導体工業 (高純度シリコン製造、プロセスガス)
d)燃料電池の燃料、液化水素として宇宙ロケット用燃料

2-2.一酸化炭素(CO)
①色・臭い・種類:無色、無臭、可燃性、毒性の強いガス
②重さ:28.01g/mol
③溶解性:水に溶けにくい。
④製造方法:原料ガスを5~10MPa、250°C程度、Cu-Zn-Al2O3系触媒上で反応させる。
⑤その他特徴:
a) 強い還元性。
b) 人体に極めて有害で吸入すれば、赤血球のヘモグロビンと結びついて一酸化炭素ヘモグロビンとなり、赤血球の機能を破壊して死に至らしめる。
c) 炭化水素系燃料の不完全燃焼、石炭・石油のガス化の際に水素とともに生成する。鉄族(Fe、Ni、Co)と反応して金属カルボニルを形成する。
⑥ 用途
メタノールの合成、酢酸の合成に用いられる。

2-3.メタン(CH4)
①色・臭い・種類:無色、無臭、可燃性ガス
②重さ:16g/mol
③溶解性:水に溶けにくい
④製造方法:
我が国では輸入LNG(オーストラリア、カタール等)より分離。 
⑤その他特徴:
a) アルカン(パラフィン炭化水素)に属す。
b) 有機物の腐敗などに伴って発生し、地球では天然ガスの主成分
c) 空気より軽い
①水蒸気と反応してCOとH2を生成:CH4 + H2O → CO + 3H2
②塩素と反応して塩素化合物を生成:CH3CI 塩化メチル、 CH2Cl2 塩化メチレン、 CHCI クロロホルム、 CCI 四塩化炭素
⑥用途
a) 最大用途は燃焼用で、都市ガスが主(参考:付臭剤入り)。
b) 化学工業原料としては合成ガスの製造用

2-4.エタン(C2H6)
①色・臭い・種類:無色、無臭、可燃性のガス
②重さ:30.07g/mol
③溶解性:水に溶けにくく、有機溶媒に溶けやすい
④製造方法:
工業的製法については一般的なアルカンと同様、石油を分留することで得られる。
⑤その他特徴:
a) 空気に対する比重がほぼ1
b) 高濃度のガスの吸入で中枢神経機能の低下がみられるが、5%程度以下の濃度では全身症状は認められない。
⑥ 用途
エタンを塩素化すると塩化エチルななどの塩化物が得られ、ガソリン添加剤の製造原料として以前は大量に用いられた。現在では塩素系溶剤や有機金属化合物などで用いられる。

2-5.エチレン(C2H4)
①色・臭い・種類:無色、甘い臭い、可燃性ガス
②重さ:28g/mol
③溶解性:水にはほとんど溶けないが、アルコール、エーテルにはよく溶ける。
④製造方法:
ナフサ(粗製ガソリン)等の炭化水素の熱分解で製造されている。 
⑤その他特徴:
a) 二重結合を有する最も簡単なアルケン(オレフィン炭化水素)。
b) 二重結合を有するため、付加反応や重合反応を起こしやすい。
塩素化→二塩化エチレン、水和→エタノール、部分酸化→アセトアルデヒド、酸化エチレン、重合→ポリエチレン
c) 植物の成熟を促進する作用を有する。
⑥用途
プラスチックや合成繊維等の石油化学工業の基礎原料ポリエチレン、アセトアルデヒド、酸化エチレン、エタノール等の原料

2-6. 酸化エチレン(C2H2O)
①色・臭い・種類:無色、エーテル臭、可燃性・毒性ガス
②重さ:28g/mol
③溶解性:水、アルコール、エーテル等の溶媒に、全ての割合で溶解する。
④製造方法:
触媒を使用し、エチレンを酸素により直接酸化して製造される。
⑤その他特徴:
a) 空気や酸素が無くても発火等により、分解爆発を起すことがある。
b) 爆発限界:3~100%
⑥用途
エチレングリコールの製造原料。滅菌ガスとしても有用。

2-7.プロピレン(C3H6)
①色・臭い・種類:無色、エーテル臭、可燃性ガス
②重さ:42.08g/mol
③溶解性:水やジエチルエーテルなどによく溶ける。
④製造方法:
日本ではエチレン製造の副産物として製造
⑤その他特徴:
エチレンと同様に二重結合を有する可燃性の不飽和炭化水素で、加圧すると液化する。
a) 水素化 → プロパン
b) 水和 → 2-プロパノール(イソプロピルアルコール)
c) アンモニアと空気と共に高温で気相接触反応 →「アクリロニトリルCH2CHCN」
⑥用途
ポリプロピレン1-ブタノール、酸化プロピレン、アクリロニトリル(合成繊維、合成樹脂の原料)等の原料。
 
2-8.アセチレン(C2H2)
①色・臭い・種類:無色、エーテル臭(特有の臭気)、可燃性ガス
②重さ:26.04g/mol
③溶解性:水に溶ける
④製造方法:
1) カルシウムカーバイド(炭化カルシウム)と水の反応:CaC2 + 2H2O → C2H2 + Ca(OH)2
2) 化学プラント:LPガス又はナフサの高温熱分解
⑤その他特徴:
a) 標準生成エンタルピーが正で、分解爆発の危険性高い。
b) 爆発限界は2.5~100% 圧縮ガスとして、容器に充てんできないため、固形マス+溶剤:
 容器への充てんは、容器内に珪酸カルシウムを主成分とする多孔質の固形マスを詰め、アセトンなどの溶剤を浸潤させ、アセチレンを加圧溶解充てんする。
c) 銅、銀などと反応して爆発性の金属アセチリドを生成する。アセチレンに接触する材料には、銅、銀及び銅含有率が62%以上の銅合金の使用を避ける。
⑥用途:
アセチレンと酸素の燃焼温度は3000℃を超えて、金属(特に鉄鋼材)の溶断・溶接に使用。
カーボンブラック(アセチレンブラック)は乾電池用電極。
   
2-9.エタノール(CH3CH2OH) 
①色・臭い・種類:無色、特有の芳香を持つ、揮発性の液体
②重さ:46.09/mol
③溶解性:水に溶けやすい
④製造方法:
エチレンと硫酸を反応させて硫酸エチルを生成した後に加水分解する方法とエチレンの水和反応がある。
⑤その他特徴:
a) 水とエタノールの混合液を蒸留によって、2つの成分に完全に分離することはできない
⑥ 用途
殺菌・消毒に用いられるほか、溶剤や燃料として用いられる

2-10.LPガス(液化石油ガス)
定義:LPガスとは、炭素数3及び4の炭化水素化合物の混合物「主成分はプロパン、ブタン」
①色・臭い・種類:無色、無臭、可燃性ガス
②重さ:ー
③溶解性:少し溶ける
④製造方法:
原油や天然ガスの随伴ガスから回収したものを輸入(中東、アメリカ)。
⑤その他特徴:
a) 臨界温度が常温より高く、圧縮すると容易に液化する
b)ガスの密度は空気より重く1.5~2倍、低い所に滞留しやすい。
c) 電気絶縁性が良く、静電気が蓄積されやすく、放電による発火危険。
d) 本来は無臭であるが、家庭用で使用するLPガスには付臭剤が入れてある
⑥用途
家庭用・工業用燃料、自動車燃料、都市ガス用、化学工業原料(アセチレン、エチレン、プロピレン、合成ガス)

支燃性ガス

3-1.酸素(O2) 
①色・臭い・種類:無色、無臭、支燃性ガス
②重さ:32g/mol (空気(28.9g/mol)より重い)
③溶解性:水にわずかに溶ける
④製造方法:
1) 空気液化分離法空気を低温に液化して精留分離
2) PSA法合成ゼオライト吸着剤を用いて圧力をスイング
⑤その他特徴:
a) 沸点は-183.0℃、気体・液体とも常磁性を示す。
b) 支燃性ガスの代表であり、ほとんどの単体や化合物と反応して酸化物をつくる。
c) 有機物などは、空気中よりも激しく燃焼する。
→酸素の設備は、油脂類等の可燃物を除去してから使用する。
d) 赤熱した鉄、アルミ等も、酸素中では激しく燃焼する。
e) 酸素不足(18%未満)で酸欠。逆に高濃度の酸素(60%以上)を長時間吸入すると、肺に充血をきたし、有害
⑥用途:

3-2.フッ素(F2)
①色・臭い・種類:淡黄色、特有のにおい、毒性の強い支燃性ガス
②重さ:37.8g/mol
③溶解性:水に溶ける
④製造方法:天然には蛍石や氷晶石などに含まれる。
⑤その他特徴:
a) 全ての元素の中で最も強い酸化力を持ち、ほとんどすべての元素と反応する。
b) 水素とは冷暗所においても混合により発火爆発を起こす。
c) 腐食性が強く、ほとんどの金属と反応してフッ化物を作るが、ニッケル、銅などとは金属表面に薄いフッ化膜が形成されるため、内部への腐食侵入が抑制される。
d) 皮膚に接触すると組織を激しく刺激し腐食を起こし、吸入すると微量でも器官を刺激し、肺の充血を起こす。
⑥用途
ウラン235(235U)濃縮のため、揮発性の高い六フッ化ウラン(UF6)を製造する目的で単体フッ素が利用される。フッ素を添加した合成樹脂やゴムは、酸・アルカリ性の薬品や摩耗などに対して耐久性が高まるため、半導体製造装置や自動車などの部品・部材に使われる。

3-3.塩素(Cl2)
①色・臭い・種類:黄緑色、刺激臭、毒性の強い支燃性ガス
②重さ:70.8g/mol
③溶解性:水に溶ける。
④製造方法:
工業的には、食塩水の電気分解で製造される。
a) 水銀法:水銀汚染による公害問題により国内では廃止。
b) 隔膜法副生NaOHの純度、エネルギー効率が劣り、国内では廃止。
c) イオン交換膜法陽極と陰極を陽イオン交換膜で仕切って電気分解。陽極で塩素が発生し、陰極でNaOHと水素を生成。
⑤その他特徴:
a) 空気より重い
b) 強い酸化力を有し、可燃性物質に対し支燃性を示す。
c) 反応活性が強く、希ガス、炭素、窒素、酸素以外の元素と直接化合する。
d)塩素爆鳴気塩素と水素との等体積混合ガス。冷暗所では変化しないが、加熱・光などにより爆発的に反応して塩化水素となる。
e) 水に溶解すると、塩酸及び次亜塩素酸(HCIO:Oで漂白作用)を生ずる。
f) 水分を含んだ塩素ガス:チタン以外のほとんどの金属を腐食」(参考:Tiには水>0.3~0.4wt%は緩和剤)
g)乾燥した塩素ガスはチタンと反応して気体のTiCI4となる。
チタンを乾燥塩素の設備などに使ってはならない。その他金属は、常温ではほとんど腐食しないが、鉄は120℃を超えると腐食する。
h) 圧縮により容易に液化する。
⑥ 用途
塩素含有化合物(塩ビ、塩素系溶剤等)の原料、パルプ漂白、金属の精錬、水道水の殺菌等に使用される。

3-4.亜酸化窒素(N2O)
①色・臭い・種類:無色、支燃性ガス
②重さ:44.01g/mol
③溶解性:水に溶ける。
④製造方法:
硝酸アンモニウムを高温で分解。(参考:エアバックインフレーター=硝酸グアニジン、硝酸アンモニウム)
⑤その他特徴:
a) 標準生成エンタルピーが正であり、高圧でエネルギーを与えると分解爆発を起す。
⑥ 用途
医療用麻酔剤(笑気ガス)半導体用、起爆薬原料等。(参考:指定薬物となり販売時の用途確認が必要となった)

3-5.一酸化窒素(NO)
①色・臭い・種類:無色、無臭、支燃性ガス
②重さ:30.01g/mol
③溶解性:水に溶けにくい
④製造方法:
アンモニアを触媒存在下で空気酸化。
⑤その他特徴:
a) 酸素に触れると直ちに酸化されて茶褐色の二酸化窒素NO2になる。
⑥ 用途
硝酸を製造する中間原料

3-6.三フッ化窒素(NF3)
①色・臭い・種類: 無色の支燃性ガスで、毒性ガス。
②重さ:71g/mol
③溶解性:水にわずかに溶ける。
④製造方法:
⑤その他特徴:
a) 常温では反応性に乏しいが、高温では強力な酸化剤として、可燃性のグリースやオイルなどと接触すると発火する。
b) 水素との混合ガスは激しい爆発。(NF3 + 3/2H2 → 3HF + 1/2N2)
⑥用途
半導体製造プロセスにおけるエッチング・クリーニング用ガス。

毒性ガス

4-1.臭化水素(HBr)
①色・臭い・種類:無色、刺激臭、毒性ガス・不燃性ガス
②重さ:80.9g/mol
③溶解性:水と共沸混合物をつくり、非常によく溶けて臭化水素酸になる。
④製造方法:
200–400 ℃ 程度の高温で水素と臭素を反応させる
⑤その他特徴:
a) 湿った空気中では白煙を生ずる。
b) 臭化水素酸は強酸であるが、塩酸に比べて分解しやすく、分解して臭素を生成し着色する
c) 人体に対する有害性は塩化水素に似て粘膜への茂樹が強く、呼吸への作用もある。
⑥ 用途
無機の臭化物および臭化アルキルの製造、医薬、有機中間体などに用いられる。半導体製造のドライエッチング用ガスとして使われる。

4-2.シアン化水素(HCN)
①色・臭い・種類:無色透明、アーモンド臭、可燃性・毒性の液体
②重さ:27.03 g/mol
③溶解性:水によく溶け、水溶液は弱酸性を示す。
④製造方法:
ソハイオ法によるアクリロニトリル製造の際の副産物として得られる
⑤その他特徴:
a) 水分・アルカリ性物質により重合して褐色の固体を生成する。
b) 無機酸(硫酸、燐酸など)を少量加えて、重合を防止する。
c) 猛毒であり、吸入すると中枢神経に迅速に作用し呼吸機能を麻痺させる。
⑥用途
アセトンとの反応からメタクリル酸メチルが合成(アクリル樹脂の原料)。無機シアン化合物(めっき、食品添加物等)の合成原料。

4-3.硫化水素(H2S)
①色・臭い・種類:無色、特有の腐卵臭、可燃性・毒性ガス
②重さ:34.08g/mol
③溶解性:水によく溶け、弱い酸性を示す
④製造方法:
石油精製の過程において水素化脱硫装置によって生じた硫化水素を含む酸性ガスをアミン水溶液で吸収したのち、再加熱によって高濃度の硫化水素を含むガスを得る
⑤その他特徴:
a) 空気中で青い炎を上げて燃える
b) 還元性が強い
c) 濃硝酸、発煙硝酸と激しく反応する腐食性が強く、水分がある環境では特に著しい腐食性を示す。
d) 高濃度ガスを吸入した場合、即死、低濃度でも中枢神経を麻痺させたり、失神、呼吸停止を起こす。
⑥ 用途
 金属精錬、蛍光物質原料の製造、工業薬品、医薬、農薬などの製造に利用
 
4-4.フッ化水素(HF)
①色・臭い・種類:淡黄色、特有の刺激臭、極めて強い毒性のある支燃性ガス
②重さ:20.01 g/mol
③溶解性:水に溶ける
④製造方法:
蛍石などを原料にHFとKFを生成し、その溶融混合物を電気分解して製造する。
⑤その他特徴:
a) 全ての元素の中で最も強い酸化力をもち、希ガスであるキセノン、クリプトンとも直接反応してフッ化物をつくる。
b) 水素とは冷暗所においても混合により発火爆発を起こす(フッ素爆鳴気)。
c) 腐食性が強く、常温でほとんどの金属と反応。しかしAl、Mg、Cu、Fe、Niなどの金属では不動態皮膜ができて内部侵食抑制。
⑥用途
UF(ウラン濃縮)SF(変圧器、エッチング)、フロン(CxFy等)などの製造。

4-5.塩化水素(HCl)
①色・臭い・種類:無色、刺激臭、毒性ガス
②重さ:36.46g/mol
③溶解性:水に溶けると塩酸になり、強酸性を示す
④製造方法:
工業的には塩化ナトリウム水溶液の電気分解によって水酸化ナトリウムとともに水素と塩素を生成し、その後水素と塩素を混合して作る(イオン交換膜法)。
⑤その他特徴:
a) イオン化傾向が水素より大きい金属は、塩化水素に侵され、水素を発生して塩化物となる。
b) 塩化水素自体には可燃性はないが、金属との反応で発生する水素が空気中で爆発する事がある。吸入すると喉、目、鼻を刺激し咳が出る
⑥ 用途
 グルタミン酸ナトリウムおよび醤油などの調味料の製、香料、染料、医薬、農薬および中間体の製造、各種化学薬品、銅板や銅材のさび取り用に用いられる。

4-6.ホスゲン(COCl2)
①色・臭い・種類:無色、独特の青草臭、きわめて毒性の強いガス
②重さ:98.92 g/mol
③溶解性:水に溶ける
④製造方法:
活性炭触媒を用いて、COと塩素を反応させる。
⑤その他特徴:
a) 可燃性も支燃性も示さない。
⑥用途
染料、ポリウレタン繊維、ポリカーボネイト樹脂などの原料

4-7.シラン(SiH4)
①色・臭い・種類:無色、わずかに刺激臭、可燃性ガス
②重さ:32.12 g/mol
③溶解性:水に溶ける
④製造方法:
他ケイ素、水素を原料とする不均化反応法
⑤その他特徴:
a) Si-H結合を有する化合物を一般にシラン類という
b) 常温で空気と接触すると自然発火する。不活性ガスで希釈した場合でも空気中で爆発することがある
c) 水・酸とは反応しないが、アルカリ性水溶液と反応して水素を発生する。
d)塩素臭素とは、常温で爆発的に反応する。
⑥用途
シリコン半導体、太陽電池等の原料

4-8.アルシン(AsH3)
①色・臭い・種類:無色、にらのような不快臭、可燃性・毒性ガス
②重さ:77.95g/mol
③溶解性:極性溶媒に溶け易く、有機溶媒に溶け難い。
④製造方法:
ヒ化カルシウムに希硫酸を作用させると発生する
⑤その他特徴:
a) ヒ素の水素化物。GaAs原料。
b) 常温では安定で、230~240℃から分解が始まる。
c) 塩素と激しく反応し、塩化水素とヒ素を生ずる。
d) 吸入すると血液中のヘモグロビンと結合し、溶血作用を起こす。
⑥ 用途
化合物半導体の原料として用いられる。

4-9.ホスフィン(PH3)
①色・臭い・種類:無色、不快臭、毒性ガス
②重さ:34.0g/mol
③溶解性:水に溶けにくい
④製造方法:黄リンやリン酸を水酸化カリウム等のアルカリを高温で加水分解する
⑤その他特徴:
a) リンの水素化物。GaP、InP原料。
b) 自然発火性
c) 常温では安定で、約300℃から分解が始まる
d) フッ素、塩素、硝酸とは、爆発的に反応する
e) 吸入すると肺水腫や発作的な昏睡状態を起こす
⑥ 用途
Si半導体製造のドーピングガス、化合物半導体製造用、くん蒸剤 (害虫)。

4-10.ジボラン (B2H6)
①色・臭い・種類:無色、特有な臭気、可燃性・毒性ガス
②重さ:27.67g/mol
③溶解性:水には加水分解する
④製造方法:
三フッ化ホウ素を加水分解する
⑤その他特徴:
a) Bの水素化物の中で最小の分子量
b) 湿気のある空気中では低温においても自然発火する
c) 熱的に不安定で室温で徐々に分解する
⑥ 用途
半導体材料ガスとして用いられる。

4-11.ゲルマン (GeH4)
①色・臭い・種類:可燃性、毒性ガス
②重さ:76.62g/mol
③溶解性:水に溶けない
④製造方法:二酸化ゲルマニウムと水素化ホウ素ナトリウム等のエンを弱酸中で水と反応させる
⑤その他特徴:
a) ゲルマニウムの水素化物。SiGe原料。
b) 分解爆発性(GeH→Ge+2H2)
⑥ 用途
アモルファスシリコンのCVD工程で用いられる

4-12.セレン化水素(H2Se)
①色・臭い・種類:無色、HSに似た不快臭、可燃性・毒性ガス
②重さ:80.9g/mol
③溶解性:水に溶けにくい
④製造方法:セレンと金属の化合物に水または希塩酸を反応させる
⑤その他特徴:
a) 常温では安定だが約160℃で分解を始める。湿気により徐々に分解しSe析出
⑥ 用途
半導体製造のドーピングガスとして用いられる

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