ガスの性質過去問傾向
ガスの性質については、乙種化学の学識にて出題される分野です。2012年からの過去の12年分から出題傾向をまとめました。ガスの性質は過去12年間で21問出題されており、ほとんど毎年2問出題されています。1問しか出題されなかったのは2012年と2015年の2回のみです。ガスの性質に関しての出題は広範囲にわたります。下記の表の通り、2回以上出題されているガスは4種類しかありません。そのため、主要なガスについての性質をほとんど全部覚える必要があると言えます。
項目 | 出題数 |
フッ素 | 2 |
二酸化炭素 | 2 |
塩素 | 2 |
シアン化水素 | 2 |
プロピレン | 1 |
エチレン | 1 |
水素 | 1 |
ホスゲン | 1 |
酸素・窒素 | 1 |
LPガス | 1 |
モノシラン | 1 |
アンモニア | 1 |
メタン | 1 |
亜酸化窒素 | 1 |
酸化エチレン | 1 |
一酸化炭素 | 1 |
ジボラン | 1 |
練習問題
ここでは、ガスの性質の分野における基本的な用語や知識に関する問題を掲載しています。問1~7はガスの性質に関する特徴を問う内容です。問8~10は過去に複数回出題された内容に関する内容です。問11~23は過去に1度出題された内容に関する問題です。
次の各問について、適切な語句や意味を答えなさい。
問1.支燃性ガスを8つ答えよ。
解答:オゾン、酸素、空気、塩素、二酸化塩素、フッ素、三フッ化塩素、三フッ化窒素
問2.不活性ガスを8つ答えよ。
解答:ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、 キセノン、ラドン、窒素、二酸化炭素
問3.分解爆発性ガスを7つ答えよ。
解答:アセチレン、ヒドラジン、オゾン、エチレンオキシド、エチレン、ゲルマン、一酸化窒素
問4.次のガスの色を答えよ。
塩素、オゾン、二酸化窒素、臭素、フッ素、ヨウ素
解答:塩素:黄緑色、オゾン:淡青色、二酸化窒素:赤褐色、臭素:赤褐色、フッ素:淡黄色、ヨウ素:黒紫色
問5.最も軽い気体を答えよ。
解答:水素
問6.最も密度が小さい気体を答えよ。
解答:水素
問7.最も沸点の低い気体を答えよ。
解答:ヘリウム
問8.空気より重い刺激臭で、食塩の電気分解によって製造されるガスは何か。
解答:塩素
問9.特有のにおいを持つ毒性ガスで、ソハイオ法によるアクリロニトリルの副生物として得られるガスは何か。
解答:シアン化水素
問10.地球温暖化の原因と考えられるガスであり、冷やすとドライアイスになるガスは何か。
解答:二酸化炭素
問11.無色透明の可燃性ガスで水和によって2-プロパノールになるガスは何か。
解答:プロピレン
問12.無色、特有のにおいを持つ可燃性ガスで、塩素化すると1,2-ジクロロエタンを得られるガスは何か。
解答:エチレン
問13.最も密度の低い可燃性ガスで、酸素との混合物に点火すると爆鳴気を起こすガスは何か。
解答:水素
問14.無色、毒性の強いガスで、加水分解によって、二酸化炭素と塩化水素を生じるガスは何か。
解答:ホスゲン
問15.空気中の9割以上を占めるガスを2種類答えよ。
解答:酸素、窒素
問16.常温で圧縮すると容易に液化するため、液化ガスとして貯蔵、輸送されており、主成分としてプロパン、ブタンを含むガスを何というか。
解答:LPガス
問17.無色、特異臭のする毒性ガスで、半導体CVD工程に用いられたり、太陽電池の原料として用いられるガスは何というか。
解答:モノシラン
問18.水によく溶け、ハーバー・ボッシュ法で製造されるガスは何か。
解答:アンモニア
問19.水に溶けず、天然ガスから得られるもっとも単純な炭化水素は何か。
解答:メタン
問20.笑気ガスと呼ばれる麻酔作用のあるガスは何か。
解答:亜酸化窒素
問21.水によく溶ける分解爆発性のガスで、水と反応させ、エチレングリコールが生成するガスは何か。
解答:酸化エチレン
問22.無色、無臭、人体に有害なガスで、吸い過ぎると中毒症状を起こし、死に至るガスは何というか。
解答:一酸化炭素
問23.自然発火性を持つガスで、半導体製造のドーピングガスとして用いられるガスは何か。
解答:ジボラン
演習問題
問1~6について、正しいものをすべて答えなさい。また、問7〜16に関して、正しい選択肢をすべて答えなさい。また、誤っている場合、誤りの部分を正しく直しなさい。
問1.次のガスのうち、支燃性ガスはどれか。
①オゾン ②亜酸化素 ③アンモニア ④一酸化炭素 ⑤塩素
解答:①オゾン、②亜酸化窒素、⑤塩素
解説:アンモニア、一酸化炭素は可燃性ガスです。
問2.次のガスのうち、可燃性ガスはどれか。
①ホスゲン、②オゾン、③一酸化炭素、④フッ素、⑤二酸化硫黄、⑥窒素、⑦シラン、
⑧硫化水素、⑨ヘリウム
解答:③一酸化炭素、⑦シラン、⑧硫化水素
解説:支燃性ガスはオゾン、フッ素で、不活性ガス(不燃性ガス)はホスゲン、二酸化硫黄、窒素、ヘリウムです。
問3.次のガスのうち、空気よりも軽いものはどれか。
①一酸化炭素、②二酸化炭素、③メタン、④水素、⑤アセチレン、⑥アンモニア、
⑦塩化水素、⑧窒素、⑨プロパン、⑩ネオン
解答:②二酸化炭素、⑦塩化水素、⑨プロパン
解説:空気のモル質量はおよそ29g/molであるため、モル質量がこれより小さいものを選択します。各ガスのモル質量は下記です。
①一酸化炭素 :28g/mol ②二酸化炭素 :44g/mol
③メタン :16g/mol ④水素 :2g/mol
⑤アセチレン :26g/mol ⑥アンモニア:17g/mol
⑦塩化水素 :36g/mol ⑧窒素 :28g/mol
⑨プロパン :44g/mol ⑩ネオン:20g/mol
問4.次のガスのうち分解爆発を起こすものはどれか。
①ヒドラジン、②ゲルマン、③アンモニア、④プロパン、⑤モノシラン、⑥アルシン
解答:①ヒドラジン、②ゲルマン
解説:アンモニア、プロパン、アルシンは可燃性ガス、モノシランは自然発火性ガスです。
問5.次のガスのうち、可燃性ガスはどれか。
①NH3、②O2、③SiH4、④F₂、⑤COCI、⑥C2H4、⑦Ar
解答:①NH3、③SiH4、⑥C2H4
解説:O2、F2は支燃性ガス、COCl、Arは不燃性ガスです。
問6.次のガスのうち不燃性ガスはどれか。
①三フッ化窒素、②二酸化炭素、③ブタン、④クリプトン、⑤硫化水素、⑥空気
解答:②二酸化炭素、④クリプトン
解説:三フッ化窒素、空気は支燃性ガス、ブタン、硫化水素は可燃性ガスです。
問7.次の①~④の記述のうち、メタンについて正しいものはどれか。
①天然ガスの主成分であり、アルケンである。
②空気より軽い可燃性のガスである。
③メタンは、無色無臭で毒性はない。
④水蒸気改質や部分酸化により合成ガスの製造や熱分解によりカーボンブラックが得られる。
解答:②、③、④ 誤り:①アルケン→アルカン
解説:自然界に大量に存在していて、アルカン(パラフィン炭化水素)です。モル質量は16g/molのため、空気(およそ29g/mol)より軽いガスです。沸点は-1615℃で臨界温度は-82℃です。触媒存在下で酸素と反応して一酸化炭素と水素を生成します。
問8.次の①~④の記述のうち、エチレンについて正しいものはどれか。
①水和するとエタノール、塩素を付加すると1,2-ジクロロエタンが生成する。
②臨界温度は1℃である。
③水素化するとアセチレンになる。
④空気より軽い可燃性ガスである。
解答:①、④ 誤り: ② 1°C→9.5°C ③ アセチレン→エタン
解説:臨界温度は9.5℃です。アセチレンは三重結合をもつ化合物です。二重結合をもつエチレンは付加反応によりエタンになります。
問9.次の①~④の記述のうち、水素について正しいものはどれか。
①ガスのなかで、最も軽く、還元性が強い。
②炭化水素の水蒸気改質で製造される。
③常温で圧縮した場合、容易に液化する。
④常温、大気圧、空気中での爆発下限界は一酸化炭素より高い。
解答:①、② 誤り: ③ 液化する。→液化しない。 ④ 高い。→低い。
解説:水素の発火温度は500°Cと高く、アセチレンやプロパンより高いです。一方、臨界温度は-239.9℃のため、常温では液化できません。水素の爆発下限界は4%、一酸化炭素の爆発下限界は12.5%です。
問10.次の①~④の記述のうち、塩素について正しいものはどれか。
①空気より重く、刺激臭のあるガスである。
②食塩水の電気分解によって製造できるが、工業的には用いられない。
③水素との等モル混合ガスは、加熱したり紫外線を照射したりすることでは反応しない。
④常温で圧縮しても液化できない。
解答:① 誤り:② 用いられない。→用いられる。 ③反応しない。→反応する。 ④できない。→できる。
解説:塩素は70.8g/molで緑黄色の支燃性ガスです。水素との等モル混合ガスは、加熱したり紫外線を照射したりすることで爆発的に反応して塩化水素を生成します。臨界温度144℃です。
問11.次の①~④の記述のうち、一酸化炭素について正しいものはどれか。
①常温、大気圧の空気中の爆発範囲は12.5~50vol%である。
②鉄と高圧で反応すると、 鉄カルボニルを生成する。
③メタノール、酢酸、ブタノールの合成に用いられる。
④還元力が強く、還元によって金属を単体にする。
解答:②、③、④ 誤り: ① 50→74
解説:一酸化炭素は、無色、無臭の可燃性ガスです。爆発範囲は、常温、 大気圧の空気中で 12.5~74 vol%です。
問12.次の①~④の記述のうち、酸化エチレンについて正しいものはどれか。
①常温常圧で、分解爆発を起こす。
②水、アルコール、アミン等と良く反応する。
③空気より軽いガスである。
④無色、エーテル臭があるが、毒性はない。
解答:①、② 誤り: ③ 軽い→重い ④ ない。→ある。
解説:爆発範囲が3~100%のため、空気が存在しなくても分解爆発を起こします。高濃度では刺激臭があり、毒性ガスです。
問13.次の①~④の記述のうち、亜酸化窒素について正しいものはどれか。
①沸点が水より高く、アルコールには溶ける。
②赤褐色のガスで笑気ガスとも呼ばれる。
③支燃性ガスであり、硫黄やリンは亜酸化窒素中でよく燃える。
④吸熱化合物であるため、高圧の亜酸化窒素にエネルギーを与えると分解爆発する危険がある。
解答:③、④ 誤り: ① 高く→低く ② 赤褐色→無色
解説:亜酸化窒素の沸点は88.5℃であるため、水より沸点が低く、若干の甘味があるガスです。高温では分解し酸素を生じるので燃焼を助けるため、硫黄やリンは空気中よりも良く燃えます。
問14.次の①~④の記述のうち、ホスゲンについて正しいものはどれか。
①無色、特有の匂いを持ち、毒性が極めて強い。
②加熱しても分解しない。
③可燃性ガスである。
④50ppm以上吸入すると30分以内に死に至る。
解答:①、④ 誤り:② 分解しない。→分解する。③ 可燃性ガス→不燃性ガス
解説:ホスゲンは、不燃性ガスで、水酸化ナトリウムに吸収されます。一酸化炭素と塩素を、触媒により反応させて製造されます。
間15.次の①~④の記述のうちシアン化水素について正しいものはどれか。
①無色の可燃性液体であるが、アーモンドのような匂いがする。
②水分またはアルカリ性物質などを含むと重合が促進する。
③メタクリル酸メチルの合成原料である。
④アクリロニトリル製造の際の副産物として得られる。
解答:①、②、③、④
解説:シアン化水素 (HCN) は、水、アルコールによく溶け、猛毒で吸入すると中枢神経に作用し呼吸機能を麻痺させます。重合によって褐色の固体を生じます。
問16.次の①~④の記述のうち二酸化炭素について正しいものはどれか。
①無色、無臭の不燃性ガスである。
②地球温暖化の原因物質であり、近年では大気中の含有量は約3%となっている。
③尿素およびソーダ灰の原料である。
④水分を含む二酸化炭素は鋼材を腐食する。
解答:①、③、④誤り:②約3% → 約0.3%
解説:二酸化炭素を含む水は炭酸水であり、弱酸性です。
問17.次の①~④の記述のうちフッ素について正しいものはどれか。
①常温で特有な刺激臭のある緑色のガスである。
②支燃性ガスで、水素とは冷暗所においても混合爆発を起こす。
③反応性が高いが、希ガスとは反応しない。
④多くの金属と反応し、フッ化物を生成する。
解答:②、④ 誤り:①緑色 → 淡黄色、③反応しない → 反応する
解説:フッ素は反応性が高いため、希ガスと反応します。
問18.次の①~④の記述のうちプロピレンについて正しいものはどれか。
①無色の可燃性ガスである。
②重合するとポリプロピレンができる。
③ベンゼンを付加するとクメンが得られる。
④常温常圧では、液体である
解答:①、②、③ 誤り:④液体 → 気体
解説:炭素の数が3個で二重結合を1個持つアルケンであるため、水和によって2-プロパノール、ベンゼン付加でクメン、塩素化で1,2-ジクロロプロパン、接触酸化でアクロレイン、重合でポリプロピレンが生成する。
問19.次の①~④の記述のうちLPガスについて正しいものはどれか。
①炭化水素の混合物でプロパン、ブタンが主成分である。
②通常は無色無臭の可燃性ガスである。
③常温で圧縮すると容易に液化するため、液化ガス使用される。
④燃料として用いられる。
解答:①、②、③、④
解説:LPガス自体は無臭ですが、一般に良く用いられるため、メルカプタン等を添加して着臭し、漏えいがすぐわかるようになっています。
問20.次の①~④の記述のうちアンモニアについて正しいものはどれか。
①分子量が小さいため空気より軽いガスである。
②水によく溶けるが、不燃性ガスである。
③二酸化炭素と反応させて、尿素を合成に用いられる。
④常温で圧縮して液化可能な毒性ガスである。
解答:①、③ 誤り:②不燃性ガス → 可燃性ガス ④液化可能 → 液化しにくい
解説:尿素合成の原料であり、窒素肥料の原料でもあります。
問21.次の①~④の記述のうちホスゲンについて正しいものはどれか。
①無色無臭で毒性が極めて強いガスである。
②水によって加水分解する。
③ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂の原料である。
④ホスゲン合成の原料として一酸化炭素と塩素を反応させて生成できる。
解答:②、③、④ 誤り:①無臭 → 青草臭
解説:水によって加水分解を受け、二酸化炭素と塩化水素を生じる。
問22.次の①~④の記述のうちモノシランについて正しいものはどれか。
①有機溶媒によく溶ける。
②半導体製造において製膜工程やCVD工程で用いられる。
③自然発火性があるため、水中でも燃える。
④燃焼によって黒い粉末である酸化ケイ素が発生する。
解答:①、②、③ 誤り:④ 黒い → 白い
解説:モノシランはアルカリと反応しますが、水とは反応しません。
問23.次の①~④の記述のうちジボランについて正しいものはどれか。
①淡黄色のガスで、自然発火性ガスである。
②熱的には不安定なため、室温で分解する。
③水によって、加水分解し、ホウ酸を生じる。
④半導体製造のドーピングガスとして用いられている。
解答:②、③、④ 誤り:① 淡黄色 → 無色
解説:三フッ化ホウ素を水素化リチウムや水素化ホウ素ナトリウムで還元することで得られます。
コメント