Categories: 乙種機械_学識

ポンプ・圧縮機(乙種機械学識)

ポンプの種類と特徴

吐出し量(流量)
 ポンプから一定時間に吐出す量を言います。
揚程
 ポンプが水をくみあげることのできる高さのことで、吸込み揚程(吸込み水面からポンプ中心までの高さ)+吐出し揚程(ポンプ中心から吐出し水面までの高さ)=実揚程から管内や摩擦損失水頭を加えたもの=全揚程、通常これを「揚程」と言います。

揚程の計算

ha:実揚程(吸込み揚程+吐出し揚程)、hfs:吸込み側摩擦損失
hfd:吐出し側摩擦損失、h0:残留速度ヘッド

ポンプの扱い方と注意点

キャビテーション・・液体が飽和蒸気圧以下になった時に気化して気泡が発生する現象を言います。空洞化や空洞現象とも言われます。キャビテーションによって以下の3つのことが起こり得ます。
①振動、騒音、脈動の増大する
②ポンプの揚水能力が低下→水を送れなくなる
③ポンプの部品が削られ、エロージョンが起こる

NPSH」=「Net Positive Suction Head」によるキャビテーション発生条件の確認
有効吸込みヘッド(Net Positive Suction HeadNPSH)とは体配管の任意の断面において、配管中の液体の圧力と、その温度での液体の蒸気圧の差を示す物理量です。つまりこの物理量を用いて、キャビテーションが発生しうるかどうかの条件を確認できます。
高圧ガス保安講習では有効吸込み揚程と表現されています。
その条件とは「利用し得るNPSH」>「必要NPSH」です。
利用し得るNPSH」とは有効吸込みヘッドのことで平たく言えば、運転条件によって決まる揚程を言います。
必要NPSH」とはポンプの性能等の設計で決まり、キャビテーションを起こさないために必要な揚程を言います。
実際の運転におけるキャビテーションの防止
・ポンプの回転数を下げる
・吸込み液面を上げる
・吸込み液面の圧力をあげる
・吸込側配管を短くする
・配管内径を太くする

サージング・・圧力・流量・回転数・所要動力などが周期的に変動し、不安定になる現象を言います。
サージングの発生条件は下記の3つです。
・H-Q曲線が山形特性
・気相溜まりがある
・気相溜まりの下流側の弁で流量調整している
サージングの防止方法
・ポンプの吐出し配管にバイパス配管を設けて余分な吐出し量を貯槽に戻す
・流量を変更し、気相溜まりを取り除く

ウォータハンマー(水撃作用)・・水圧管内の水流を急に締めたときに、水の慣性で管内に衝撃と高水圧が発生する現象を言います。ウォータハンマーによって配管やポンプが破壊されることがあるため、その発生を防止する必要があります。
ウォータハンマーの防止方法
・フライホイールの取付け
・サージタンクの設置
・空気弁の設置
・配管口径を大きくする

ポンプの運転方法
①直列運転
同じ能力のポンプを直列に並べて運転した場合、揚程はおよそ2倍になります。
②並列運転
同じ能力のポンプを並列に並べて運転した場合、流量がはおよそ2倍になります。

圧縮機の理論

往復圧縮機の動力
圧縮動力は、理論圧縮動力Pthによって下記の式で求められます。

Pth:理論圧縮動力[W]、 :圧縮効率、G:質量流量[kg/s]、W:仕事[J/kg]
圧縮効率は、気体の状態によって、変化し、断熱圧縮では断熱効率ηad、ポリトロープ圧縮ではポリトロープ効率ηpol、等温圧縮では等温効率ηisoで計算されます。
実際の軸動力は、機会損失Pmを加えた下記で求められます。

多段圧縮機
 気体を高圧に圧縮する場合、1段で圧縮すると、圧力比が大きくなり、温度が上昇します。多段圧縮では単段で同じ圧力まで圧縮する場合と比較して、要する仕事が少ないし、ガス温度を低く保つことができるから、過熱によって起こるピストンの焼き付けが避けられ、さらに圧縮機各部に作用する力が少なくなるから、機械の故障が少なくなります。

ターボ形圧縮機の動力
圧縮動力は、理論圧縮動力Pthによって下記の式で求められます。

g:重力加速度[m/s2]、G:質量流量[kg/s]、H:実際のヘッド[m]
実際の軸動力は、機会損失Pmを加えた下記で求められます。

速度比

N:回転数[rpm]、Q:流量[m3/min]、Had:断熱ヘッド

圧縮機の取扱い(容量制御)

遠心圧縮機
(1)バイパスコントロール
 吐出し側から出た圧縮空気をバイパスラインから吸込み側に戻す方法で、圧縮機の運転方法を変更することなく制御が可能です。一方で暖かい圧縮空気が吸込み側に戻るため、吸込み側の温度が上昇します。そのため、冷却器により低温に戻す必要があります。

(2)吐出し量の調整
 吐出し側に弁を設け、その弁を絞ることで送風量を少なるする方法です。一方で、送風された圧力は上昇します。また、圧縮機の動力はほとんど変わらないため、効率的な運転ができません。
(3)吸込み量の調整
 吸込み側に弁を設け、吸込み量自体を減らすことで、吐出し量を少なくする方法です。吐出しされる圧力が低下しますが、圧縮機の動力を減らすことが可能です。
(4)ベーンコントロール
 羽根車の入口に、放射状の可動案内羽根(「インレットベーン」または「サクションベーン」といいます)を配置して、この羽根の角度によって風量制御する方法です。他の流量調整に比べてサージングの影響が少ない方法です。

往復圧縮機
(1)クリアランス弁方式
 シリンダヘッドに取付けられたクリアランスポケットを開閉することで筒の隙間容積を変化させる方式です。体積効率を変えることで流量を調整することができます。
(2)吸込み弁アンローダ方式
 シリンダの吸込弁板を押さえつけて開放し、いったん吸込んだガスを吸込側へ逆流させて圧縮仕事を行わないようにして流量を調整する方式です。
(3)バイパス方式
 バイパスラインを設けて吐き出した圧縮空気を吸込み側に戻す方法です。

遠心圧縮機と往復圧縮機の容量調整の比較

方法遠心圧縮機往復圧縮機
バイパスコントロール
吐出し絞り〇(アンローダ式)
吸込み絞り×
ベーンコントロール×
速度制御
クリアランス弁方式×
遠心圧縮機と往復圧縮機の容量調整の比較
nerima9worker

高圧ガス製造保安責任者試験の研究をしているガス+α 産業ガスの会社に勤務している現役のエンジニアです。 2022年1月から高圧ガスの試験問題・検定問題を研究しています。 平成25年(2013年)の問題から現在までの出題傾向を踏まえオリジナルの類題を掲載しています。

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