伝熱・分離 練習問題・演習問題 乙種機械 学識

伝熱・分離の過去問傾向

 伝熱・分離については、乙種機械の学識にて近年、毎年出題される分野です。2012年からの過去の12年分から出題傾向をまとめました。伝熱・分離については、2015年から毎年出題されており、10項目が複数回出題されています。ただし、1項目自体の内容がほとんど同じ内容であるため、10項目を覚えれば解答できる確率がかなり高い分野です。語句の意味を覚えて解答しましょう。

項目出題数
熱伝導6
蒸留6
熱交換器6
吸着5
熱放射5
固体4
熱伝導率3
対流伝熱3
熱放射率3
物理吸収2
その他5

練習問題

 ここでは、伝熱・分離分野における基本的な用語や知識に関する問題を掲載しています。問1~8は過去に複数回出題された内容に関する内容です。問9~10は過去に1度出題されたことのある内容に関する問題です。問11は過去に出題されたことのない問題ですが、重要と思われる内容に関する問題です。
 次の各問について、適切な語句や意味を答えなさい。

問1.同一物質内における熱移動を何というか。

解答:伝導伝熱

問2.一般に熱伝導率は金属と非金属ではどちらが大きいか。

解答:金属

問3.熱を持った物質から電磁波として熱が放射される現象を何というか。

解答:放射伝熱

問4.固体と流体間の熱移動を何というか。

解答:対流伝熱

問5.2つの混合液体を沸点の違いを利用して分離する方法を何というか。

解答:蒸留

問6.伝熱量qを式で表せ。単位当たりの面積:A、伝熱速度:Q

解答:

問7.放射伝熱のエネルギーEを式で表せ。

解答:E = σT4 、σ:ステファン・ボルツマン定数、T:温度

問8.気体原料と液体分離剤を接触させ、気体の溶解性の違いを利用して、溶質ガスを液体へ移動させる操作を何というか。

解答:ガス吸収

問9.固体壁で隔てられた温度の異なる2つの流体間の熱の移動を何というか。

解答:熱貫流

問10.くさんの小さながあり、その穴より大きい物質は透過せず、穴より小さい物質のみを通すことで分離するものを何というか。

解答:多孔質膜

問11.「混合溶液の各成分の蒸気圧はそれぞれの純液体の蒸気圧と混合溶液中のモル分率の積で表される」のは何という法則か。

解答:ラウールの法則

問12.圧力を変化させることで、混合ガスの内、吸着剤へ吸着しやすい物質を吸着させ、その後吸着剤から分離することで、ガスを分離する方法を何というか。

解答:PSA(Pressure Swing Adsorption)

問13.力を変化させることで、混合ガスの内、吸着剤へ吸着しやすい物質を吸着させ、その後吸着剤から分離することで、ガスを分離する方法を何というか。

解答:TSA(Temperature Swing Adsorption)

演習問題

次の各問いに対して正しいかどうか答えなさい。また、誤っている場合、誤りの部分を正しく直しなさい。

問1.伝導伝熱は、固体と液体でのみ起きる現象で、熱による分子や原子の振動が隣接する分子や原子に伝わるものである。

解答:誤り 固体と液体のみ → 固体、液体、気体すべてで
解説:同一物質内における熱移動を伝導伝熱と言います。

問2.自然対流伝熱は、流体内の変化で生じる浮力によって流体内に流れが発生し熱移動が起きる現象である。

解答:正しい
解説:自然対流伝熱の反対に強制対流伝熱があります。
重要:対流伝熱に関する問題は過去に3回出題されてます。

問3.固体一流体間の伝熱では、固体壁に接した流体内で温度が急激に変化する薄い層があり、これを変化境界層という。

解答:誤り 変化境界層 → 温度境界層
解説:温度境界層は、壁面の速度が早いほど薄くなり、流体の粘性が高いほど厚くなります。
重要:固体壁に関する問題は過去に4回出題されてます。

問4.熱伝導によって壁を通過する単位時間・単位面積当たりの伝熱量は、温度差が大きくなるほど増加し、物質の厚みに反比例する。

解答:正しい
解説:フーリエの法則についての説明で、次式で表されます。q= -kA×(t1-t2)l
q:熱流束[W/m2]、k:熱伝導度[W/(m・K)]、T:温度[K]、l:物質の厚み[m]
重要:熱伝導に関する問題は過去に6回出題されてます。

問5.定常状態の伝導伝熱では、伝熱速度は熱伝導率に正比例し、熱伝導率は物質に固有の比例定数ある。

解答:正しい
解説:一般に熱伝導率は金属が大きく、次いで非金属固体あるいは液体、気体の順に小さくなります。
重要:熱伝導率に関する問題は過去に3回出題されてます。

問6.液体-液体の熱交換器の総括伝熱係数は、気体-気体の熱交換器の総括伝熱係数より一般的には小さい。

解答:誤り 液体-液体と気体-気体の入れ替え or 小さい → 大きい
解説:総括伝熱係数は熱量を求めるときに用いられます。
重要:熱交換器に関する問題は過去に6回出題されてます。

問7.固体壁で隔てられた流体間の伝熱において、単位時間当たりの伝熱量は総括伝熱係数、流体間の温度差の積で表される。

解答:誤り 総括伝熱係数、流体間の温度差 → 総括伝熱係数、流体間の温度差、伝熱面積
解説:q=UA(t1-t2) U:総括伝熱係数、A:管壁の伝熱面積、t2-t2:温度差

問8.熱交換器のチューブが銅と炭素鋼のものを比べると同サイズの場合、炭素鋼の方が伝熱量は大きい。

解答:誤り 炭素鋼の方が → 銅の方が or 大きい → 小さい
解説:熱伝導率が銅の方が炭素鋼より大きいため、銅の方が伝熱量が大きくなります。

問9.並流の熱交換器では、流体の温度差について入口は必ず出口以下となる。

解答:誤り 入口と出口を入れ替える
解説:低温流体と高温流体を反対向きに流す「向流」にすると熱交換量が上がります。

問10.熱放射率は、光沢のある金属面より、水や土のほうが小さい。

解答:誤り 小さい → 大きい
解説:一般に光沢のある金属面は熱放射率が小さいです。一方でアスファルト、土、コンクリート、水等は熱放射率が大きいです。
重要:熱放射率に関する問題は過去に3回出題されてます。

問11.黒体は熱放射を反射も透過もしないですべて吸収する仮想的な吸収体である。

解答:正しい
解説:黒体は熱放射率が1のものです。
重要:熱放射に関する問題は過去に5回出題されてます。

問12.単位時間あたりに放射される放射エネルギーは、物体表面の絶対温度の4乗に比例する。

解答:正しい
解説:放射伝熱のエネルギーEは次式で表される。E = σT4
σ:ステファン・ボルツマン定数、T:絶対温度

問13.グラスウールの熱伝導率は金属や水に比べて小さい。

解答:正しい
解説:熱伝導率が小さいため、断熱材として利用されます。

問14.平衡状態にある液体混合物中の物質の蒸気圧と溶液組成と圧力にはラウールの法則が成り立つ。

解答:正しい
解説:理想溶液の液体混合物を蒸留によって高沸点物質と低沸点物質とに分離する場合、ラウールの法則が成り立ちます。

問15.蒸留は、液体混合物に熱を加えることで、揮発性の違いを利用して分離する方法であり、常温常圧で気体であっても加圧や温度変化によって分離することができる。

解答:正しい
解説:窒素、酸素は常温常圧で気体ですが、温度を下げることで分離可能です。
重要:蒸留に関する問題は過去に6回出題されてます

問16.水素はゼオライトや活性炭に吸着しにくいガスなので、PSAによって高純度な水素ガスを得ることができる。

解答:正しい
解説:水素のような非極性ガスはゼオライトや活性炭に吸着しにくいです。

問17.一般に、吸着と脱着の操作を交互に行う際に、操作圧を変えて混合ガスを吸着により分離することをPSAという。

解答:正しい
解説:PSAはPressure Swing Adsorptioの略で酸素や窒素の分離に用いられます。
重要:吸着に関する問題は過去に5回出題されてます。

nerima9worker

高圧ガス製造保安責任者試験の研究をしているガス+α 産業ガスの会社に勤務している現役のエンジニアです。 2022年1月から高圧ガスの試験問題・検定問題を研究しています。 平成25年(2013年)の問題から現在までの出題傾向を踏まえオリジナルの類題を掲載しています。

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