化学反応式の係数を求める問題は過去12年間毎年出題されています。この問題は比較的容易で、出題パターンも似たようなものが多いため、得点源にしたい問題です。
一般に、反応式が掛けるようになるには、反応物と生成物が和かならなければなりません。しかしながら、この問題では、反応物、生成物がわかる必要はなく、係数がわかれば良いため、簡単な計算をすれば解答可能です。
例題.a P4 + b NaOH + c H2O → d PH3 + e NaH2PO2のa、b、c、d、eの係数を解答せよ。
一番最初の原子はリン(P4)です。生成物にはリン酸(PH3)とリン酸ナトリウム(NaH2PO2)があります。この時重要なことは左辺の原子の数と右辺の原子の数は同じだということです。
左辺のリンの数と右辺のリン酸のリン原子の数が同じであることから4a = d + eとなります。
同じようにしてナトリウム、酸素、水素の原子について左辺と右辺の数が同じになるように式を作ります。
リン(P):4a = d + e ・・・・①
ナトリウム(Na):b = e ・・・・②
酸素(O):b + c = 2e ・・・・③
水素(H):b + 2c = 3d + 2e ・・・・④
④-③より b + 2c – (b + 2c) = 3d + 2e – (2e) → c = 3d
この等式を満たす最小の整数はc=3、d=1
c=3を③に代入してb + 3 = 2eここで②を代入するとe + 3 = 2e → e = 3
e =3 より b = 3となります。
e = 3、d = 1を①に代入して a =1
解答:a=1、b=3、c=3、d=1、e=3
上記で記載した問題は一般的な化学反応式の係数を求める際の解き方です。しかしながら、高圧ガス試験の乙種学識においては上記の方法を用いずに解答することができます。高圧ガス試験乙種化学の学識においては、選択肢があるため、係数の選択肢も決まってしまいます。そのため、与えられた選択肢の係数をそれぞれ当てはめた場合に数が合うかどうかを確認すれば、正解が求められます。
例題.a P4 + b NaOH + c H2O → d PH3 + e NaH2PO2のa、b、c、d、eの係数は下記、あ~おのいずれが正しいか答えよ。
a | b | c | d | e | |
あ | 1 | 2 | 3 | 1 | 3 |
い | 1 | 2 | 2 | 1 | 3 |
う | 1 | 3 | 2 | 1 | 3 |
え | 1 | 3 | 3 | 1 | 3 |
お | 1 | 3 | 3 | 1 | 2 |
選択肢:あ
a = 1のとき、P(リン)は4、一方で、右辺のP(リン)はd = 1、e = 3のため、3d + e = 1 × 1 + 3 = 4のため、正しいです。
b = のとき、左辺のNa(ナトリウム)は2となりますが、右辺のNa(ナトリウム)はe = 3となります。そのため、左辺と右辺の数が異なるため、誤りです。
選択肢:い
a = 1のときのP(リン)の数は、選択肢あの計算で正しいと分かります。また、Na(ナトリウム)についても選択肢あと同様の計算で、数が合わないため、誤りとわかります。
選択肢:う
P(リン)の計算:上記により省略
b = 3のとき、左辺のNa(ナトリウム)は3となり、右辺のNa(ナトリウム)はe = 3で正しいです。
b = 3のときの左辺のO(酸素)はc = 2から、3 + 2 = 5です。一方、右辺はe = 3より3 × 2 = 6となり、異なるため誤りです。
選択肢:え
P(リン)、Na(ナトリウム):上記から計算省略
b = 3、c = 3の時の左辺のO(酸素)は3 + 3 = 6となります。一方、右辺はe = 3より、3 × 2 = 6となり、正しいです。
また、b = 3、c = 3の時のH(水素)は3 + 3 × 2 = 9、一方、右辺はd = 1、e = 3より、1 × 3 + 3 × 2 = 9となり、正しいです。
以上からすべての原子の数が一緒のため、選択肢えが正解です。
選択肢:お
a = 1のとき、P(リン)は4、一方で、右辺のP(リン)はd = 1、e = 2のため、3d + e = 1 × 1 + 2 = 3のため、誤りです。
上記のように数字を当てはめて、左辺と右辺の原子の数が同じかどうかを確認することで正解を見つけることができ、比較的容易な問題と言えます。