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化学平衡 乙種化学 学識

可逆反応

反応が右にも左にも進む場合、可逆反応といい、一方にしか進まない場合、不可逆反応と言います。
水素と窒素を高温下で混ぜるとアンモニアが生成します。一方、アンモニアを高温に保つと窒素と水素に分解されます。

N2 + 3H2 ⇄ 2NH3
左から右へ向かう反応を正反応
右から左へ戻る反応を逆反応

化学平衡

化学反応が進むと、反応は停止し、生成物はそれ以上生成されず、反応が進行しなくなります。しかしながら、可逆反応において実際には反応は停止しておらず、「化学反応の見かけ上、反応が停止したような状態」をいいます。

化学平衡の状態

・正反応と逆反応の反応速度が同じ。→ 反応速度はゼロではない!

平衡定数

下記、窒素と水素の反応式を例に平衡定数を説明します。

N2  + 3H2   ⇄ 2NH3

正反応の反応速度をv1、逆反応の反応速度をv2とし、N2、3H2、NH3の濃度をそれぞれ[N2]、[H2]、[NH3]とするとv1=k1[N2][H2]3、v2=k2[NH3]と表せる。(k1、k2はそれぞれ速度定数)
v1=v2であるから

このKを平衡定数といい、ある化学反応において、平衡定数Kcは一定であり、反応に固有の値であることを表しています。

平衡定数は濃度平衡定数とも呼ばれます。平衡定数は、不可逆反応においても、可逆的に進むとして計算可能です。不可逆反応であっても化学平衡として取扱うことができるからです。

平衡定数が大きいということは生成物が多く存在するということなので、生成系に寄っていると言えます。

平衡定数が小さいということは、反応物が多く存在するということなので、原形に寄っていると言えます。

・平衡定数が大きい → 生成系に寄っている。

・平衡定数が小さい → 原形に寄っている。

・不可逆反応においても平衡定数は計算できる。

また、aA + bB → cC + dDにおいて分圧を用いて平衡定数を表すことができます。各分圧をそれぞれPA、PB、PC、PDとすると、

と表され、圧平衡定数と呼ばれます。

・平衡定数は、濃度平衡定数、圧平衡定数とも温度一定の場合、濃度・圧力に無関係に一定です。

・濃度平衡定数と圧平衡定数は、モル数が等しいとき、値が等しくなります。

Le Chatelier’s principle ルシャトリエの原理(法則)

1884年、フランスのルシャトリエが可逆反応において下記の法則を提唱しました。
 「長期間平衡状態にあるシステムが濃度、温度、体積、または圧力の変化にさらされると、(1)系は新しい平衡状態に変化し、(2)この変化は適用された変化を部分的に打ち消します
上記の法則は下記3つの変化が起きた際に当てはめることができます。 

3つの変化
 3つの変化が起きた際、それにより反応は反応物側か生成物側のどちらかに進みます。ルシャトリエの原理からはその変化の結果について問題が出題されます。
 例としてアンモニアの合成・分解式を用いて説明します。
1N2 + 3H2  ⇄ 2NH3 + 92kJ
※N2の前の1は数が分かるようにあえて記載しています。

①濃度変化
 濃度を変化させる。つまり、平衡状態にある上記の反応式に窒素を増やすとどちらに反応が進むでしょうか。反応は正反応が進みアンモニアの生成が増加します。
 一方、平衡状態の上式にアンモニアを加えるとどちらに反応が進むでしょうか。先ほどと逆で、逆反応が進み、窒素、水素の濃度が増加します。
 つまり、可逆反応においてある物質の濃度を増加させるとその物質の濃度は減少し、反応が進むことで、増加させていない側の物質の濃度が増加します。

②圧力変化
 圧力を増加させるとどちらに反応が進むのか。上記の反応であれば、逆反応が進み、圧力を減少させると正反応が進みます。一般的に「圧力を上げると、圧力を下げる方向に平衡が移動する。」と言われています。

・定温下で、圧力を高くすると、平衡は体積が減少する方に移動する。

・定温下で、圧力を低くすると、平衡は体積が増加する方に移動する。

温度変化
 一般に「温度を上昇させると、吸熱反応が進み、温度を減少させると発熱反応が進む
ここで、下記の反応は発熱反応でしょうか。それとも吸熱反応ででしょうか。
N2 + 3H2 = 2NH3 + 92kJ
答えは、発熱反応です。一般に「反応物の化学エネルギーの総和が生成物の化学エネルギーの総和より大きいときは、発熱反応反応物の化学エネルギーの総和よりも生成物の化学エネルギ―が大きいときは、吸熱反応」と言われます。
N2 + 3H2 = 2NH3 + 92kJ
例えば、この式を「N2 + 3H2」を300kJ、「2NH3」を208kJとすると
300kJ = 208kJ + 92kJ
となります。窒素と水素を反応させると92kJ熱を放出して208kJのアンモニアになると言えます。つまり、+92kJは「N2 + 3H2」の方が化学エネルギーが大きいため、熱を発して、化学エネルギ-の小さいアンモニアになることを指します。

・定圧下で温度を高くすると、平衡は吸熱反応の方に進む

・定圧下で温度を低くすると、平衡は発熱反応の方に進む

④触媒添加
 先ほど、3つの変化と記載しながら、4つ目の項目を記載しています。4つ目の触媒添加は平衡が移動しないからです。一般に触媒は反応促進剤と言われ、反応が早く進むものの、平衡状態に達した反応に触媒を加えても、反応がどちらか一方に進むことはありません

・触媒は化学平衡には影響しない。 → 反応速度や反応の選択制には影響する。

nerima9worker

高圧ガス製造保安責任者試験の研究をしているガス+α 産業ガスの会社に勤務している現役のエンジニアです。 2022年1月から高圧ガスの試験問題・検定問題を研究しています。 平成25年(2013年)の問題から現在までの出題傾向を踏まえオリジナルの類題を掲載しています。

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