化合物を燃焼した場合、熱が発生します。その熱のエネルギーはどのくらいなのかを求める問題がたびたび出題されています。この反応熱を求める際にエンタルピー(←わかりずらい)という概念を用いて計算します。
この問題は比較的容易で、出題パターンも似たようなものが多いため、得点源にしたい問題です。
反応熱を求めるためにはまず、反応式が掛けるようにならなければなりません。反応式の書き方は、下記ブタン燃焼の例題を元に解説します。
例題1
ブタン(C4H10)の標準生成エンタルピーを148kJ/molとしたとき、ブタンの燃焼熱(Q)を求めよ。ただし、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)の標準生成エンタルピーをそれぞれ、394kJ/mol、286kJ/molとする。
燃焼熱を求める問題では、まず最初に反応する物質(上記例ではブタン)の分子式(C4H10)がわからなければなりません。反応する物質が分かれば、それを用いて反応式を書きます。
C4H10 + 13/2O2 → 4CO2 + 5H2O
この問題を解く際のポイントは、問題文に記載されている反応物と生成物を用いて反応式を書くことです。生成物(CO2とH2O)の数量は反応物の数量から回答することができます。
生成物の二酸化炭素は反応物の炭素(C4)の数量そのままの数字です。一方、水の数量は反応物の水素(C10)の半分です。酸素の数量は二酸化炭素、水の数量が決まってからの掛け算で求められます。
酸素の計算:(4×2+5)÷2=13/2
燃焼問題の場合、過去10年で出題された問題の生成物は、二酸化炭素、水しか出題されていません。なぜなら炭化水素の燃焼問題が多いからです。この2つ以外が生成物だったとしても、問題文に記載されているため、生成物がわからないということはないかと思います。
次は実際に反応熱を求めます。
反応熱(ΔQ) = -エンタルピー(ΔHf°)という式が成り立ちます。
そのため、反応の標準エンタルピー(以下ΔHf°と記載する)がわかれば、反応熱が求められます。
ΔHf° = (生成系のΔHf°の総和) – (原形のΔHf°の総和)
が成り立ちます。
結局のところ、どう計算するのかですが、ここでも問題文にヒントが記載されています。
それは問題文に記載されているΔHf°です。
生成系のエンタルピーは二酸化炭素、水のことを指し、原形はブタンを指します。
そのため計算式は
ΔHf° = 4 ×(-394) + 5 ×(-286) -(-148)
= -3,154
最初に作成した反応式が、エンタルピーを求める際に生きます。問題文に記載されたそれぞれのエンタルピーと反応式の数量を掛け、生成物から反応物を引いたら求められます。
ワンポイント 燃焼反応で出てくる酸素は、単体のため0kJ/molのため計算上は関係ない。
ΔG = -ΔH° = 3,154(kJ/mol)
最後に+、-を逆にするのを忘れないでください。
標準生成エンタルピーとは、化合物1molがその成分元素の単体から生成するときに系が外界から受け取る熱量を言います。
標準生成エンタルピーを求める問題であっても燃焼熱、反応熱を求める問題の場合もございます。しかしながら、ここで説明するのは、燃焼熱、反応熱ではなく、ある物質を作るのに必要なエネルギーを求める標準生成エンタルピーです。下記に例題を記載します。
例題2.メタノールの兵十ン生成エンタルピーを求めなさい。
メタノールの標準燃焼エンタルピー:-1370kJ/mol
水の標準生成エンタルピー:-242kJ/mol、二酸化炭素の標準生成エンタルピー:-394kJ/mol
メタノールの燃焼反応は、
C2H5OH + 3O2 = 2CO2 + 3H2O +1370kJ/mol
ここで、ΔH° = (生成系のΔHf°の総和) – (原形のΔHf°の総和)であるから、
-1370kJ/mol = (CO2の標準生成エンタルピー + H2Oの標準生成エンタルピー) - (C2H5OHの標準生成エンタルピー + O2の標準生成エンタルピー)
上記の式を入れ替えると
C2H5OHの標準生成エンタルピー = (CO2標準生成エンタルピー + H2Oの標準生成エンタルピー) - (O2の標準生成エンタルピー) - (-1370kJ/mol)
ここにH2Oの標準生成エンタルピー:-242kJ/mol、CO2の標準生成エンタルピー:-394kJ/molを代入します。
また、O2は単原子分子のため、標準生成エンタルピーが0kJ/molとなります。
C2H5OHの標準生成エンタルピー = 2 × (-394kJ/mol) + 3 × (-242kJ/mol) – (-1370kJ/mol)
= -788kJ/mol + (-726kJ/mol) + 1370kJ/mol
= -144kJ/mol
標準生成エンタルピーを求める問題においても、燃焼反応を用いることが多いです。燃焼反応を理解すれば、求められるため、何回か学習し、パターンを理解することが重要です。