材料と劣化については、乙種機械の学識にて近年、毎年出題される分野です。2012年からの過去の12年分から出題傾向をまとめました。下記表の通り、11項目が複数回出題されています。材料と劣化が、SIでの表し方の問題が多いため、9項目を暗記すれば解答できる可能性が高い問題です。しっかりと覚えて解答しましょう。
項目 | 出題数 |
粒界腐食 | 7 |
モリブデン | 5 |
不動態被膜 | 5 |
高温高圧 | 3 |
焼なまし | 3 |
チタン | 3 |
微細化 | 3 |
アノード | 2 |
応力腐食割れ | 2 |
海水中の電気防食 | 2 |
引張応力 | 2 |
その他 | 10 |
ここでは、SI単位分野における基本的な用語や知識に関する問題を掲載しています。問1~9は過去に複数回出題された内容に関する内容です。問10~12は過去に1度出題されたことのある内容に関する問題です。問13は過去に出題されたことない問題ですが、重要と思われる内容に関する問題です。
次の各問について、適切な語句や意味を答えなさい。
問1.金属材料の結晶粒界だけが選択的に腐食する現象を何というか。
解答:粒界腐食
問2.水素侵食が起こり、高温材料に適した合金は何か。
解答:クロムモリブデン
問3.金属の表面に酸化した被膜でき、内部を酸による腐食や、酸化などから保護する状態のことを何というか。
解答:不動態
問4.耐食性に優れ、高温において不動態被膜が塩化物イオンによって腐食を生じる金属は何か。
解答:チタン
問5.水素が鋼中に侵入して炭化物と反応し、結晶粒界と内部欠陥にメタンガスが発生し、鋼の脆化と割れが生じる現象を何というか。
解答:水素侵食
問6.亜共析鋼ではオーステナイト域、過共析鋼では共析変態温度以上に加熱し、炉冷する操作を何というか。
解答:焼きなまし 焼鈍(しょうどん)とも呼ばれ、鋼を柔らかくする操作です。残留応力の除去、硬度の低下、加工性の改善等を目的に行います。
問7.アルミニウム合金を添加することで、結晶粒の微細化が起こり、何に優れるか。
解答:靭性
問8.引張応力を受けている金属や合金が、その応力が引張強さ以下であっても、時間の経過によって起こる現象を何というか。
解答:応力腐食割れ
問9.外部の回路から電流が流れ込む電極を何というか。
解答:アノード
問10.亜共析鋼ではオーステナイト域、過共析鋼では共析変態温度以上に加熱し後、急冷し硬化する処理を何というか。
解答:焼き入れ 硬化を目的として行います。
問11.電解液のような腐食環境下で異なる種類の金属が接触し電子電導したときに、片方の金属の腐食が促進される現象を何というか。
解答:異種金属腐食
問12.酸素濃度の差によって起こる腐食で、通気差電池を形成した環境で、起きる腐食を何というか。
解答:通気差腐食
問13.腐食環境にさらされている全表面がほぼ均一に腐食することを何と言うか。
解答:均一腐食
問14.表面が局部的に点、または孔状に深く侵食される現象を何というか。
解答:孔食
問15.オーステナイト域に加熱した後、静かな大気で空冷する操作を何というか。
解答:焼きならし 焼き入れに比べて冷却速度は遅く、炭化物の調整、内部応力の除去を目的として行います。結晶が微細化することで靭性を主体とした機械的性質が改善される
問16.焼入れした鋼を共析変態温度以下の領域で再加熱し冷却する操作を何というか。
解答:焼きもどし 硬度の調整、靭性のカイゼン、内部応力の除去等を目的として行います。
問17.靭性(低温脆性)を評価する代表的な試験
解答:シャルピー衝撃試験
次の各問いに対して正しいかどうか答えなさい。また、誤っている場合、誤りの部分を正しく直しなさい。
問1.炭素鋼は炭素量が増加するにつれて、伸び、絞り、靭性が大きくなる。
解答:誤り 大きくなる。→小さくなる。
解答:炭素鋼において炭素の量が増加すると引張強さや降伏点が大きくなり、伸び、絞り、靭性は小さくなる。
問2.炭素含有量が多いオーステナイト系ステンレス鋼を使用することで粒界腐食を抑制した。
解答:誤り 多い → 少ない
解説:粒界での炭化クロムの生成を抑制するためには炭素含有量が少ない鋼が適切です。
重要:粒界腐食に関する問題は過去に7回出題されてます。
問3.銅・銅合金は熱伝導性が良いため、熱交換器の管材料としても用いられる。
解答:正しい
解説:銅および銅合金は熱伝導性、加工性、耐食性に優れている。
問4.アセチレン容器の材質に銅を用いることができる。
解答:誤り 用いることができる。 → 用いることができない。
解説:アセチレンは銅と反応し銅アセチリドを生成する。
問5.復水器の管材料として黄銅を用いた。
解答:正しい
解説:黄銅は銅と亜鉛の合金でアルミニウムを添加すると耐食性に優れるため、復水器の管材料として用いられる。
問6.炭素鋼は面心立方格子を有するため、低温脆性を示さない。
解答:誤り ①炭素鋼 → アルミニウムorオーステナイトステンレス鋼 ②面心立方格子→体心立方格子and低温脆性を示さない。 → 低温脆性を示す。
解説:アルミニウム、オーステナイトステンレス鋼は結晶構造が、面心立方格子のため、低温脆性を示さない。
問7.クロム(Cr)ーモリブデン(Mo)鋼は高温高圧下における水素浸食への抵抗性が弱い。
解答:誤り 弱い。 → 強い。
解説:クロム(Cr)-モリブデン(Mo)鋼は高温高圧下において水素浸食への抵抗性が強いです。
問8.炭素鋼の配管内部に錆(さび)こぶが発生すると、その下へ錆が侵食し、はがれると孔食となることがある。
解答:正しい
解説:錆こぶの下へはその錆こぶが邪魔になりその下の鋼材に 酸素の供給が少なくなり、『マクロ腐食電池』が形成されることにより、腐食されることがあります。
問9.亜鉛メッキが一部はがれ炭素鋼が露出すると、腐食電池を形成してアノードとなる亜鉛が腐食される。
解答:正しい
解説:ステンレス鋼と炭素鋼の場合、腐食電池を形成して、アノードとなる炭素鋼が腐食が促進される。
重要:アノードに関する問題は過去に2回出題されてます。
問10.アンモニアの配管材として銅を用いれる。
解答:誤り 用いれる。 → 用いれない。
解説:銅はアンモニアによって腐食されるため使用するのは不適切である。
問11.オーステナイトステンレス鋼は使用環境によって粒界腐食、孔食、応力腐食割れを起こすことはないステンレスである。
解答:誤り 起こすことはない → 起こすことのある
解説:オーステナイト系ステンレス鋼は、高温塩化物環境下で引張応力を受けると、応力腐食割れを生じることがある。
重要:応力腐食割れに関する問題は過去に3回出題されてます。
問12.乾燥した塩素ガスの熱交換器の伝熱管にチタン合金を用いることは可能である。
解答:誤り 可能である。 → 可能ではない。
解説:チタン・チタン合金は乾燥した塩素ガスによって腐食される。
重要:チタンに関する問題は過去に3回出題されてます。
問13.チタンの不動態皮膜は塩化物イオンによって常温で腐食される。
解答:誤り 腐食される → 腐食されない。
解説:チタンが塩化物イオンによって腐食されるのは高温の場合のみです。
重要:チタンに関する問題は過去に3回出題されてます。
問14.炭素鋼は常温の濃硫酸には激しく腐食するが、塩酸、希硫酸には不動態被膜を形成し腐食しない。
解答:誤り 濃硫酸 → 塩酸、希硫酸 、塩酸、希硫酸 → 濃硫酸 or 濃硝酸
解説:炭素鋼はアルカリに対しても不動態被膜を形成します。
重要:不動態被覆に関する問題は過去に5回出題されてます。
問15.海水中の鉄筋は、表面に不動態皮膜を形成するため、耐食性を示す。
解答:誤り ①海水中→コンクリート中 ②不動態皮膜を形成する→不動態皮膜を形成しない and 耐食性を示す。→耐食性を示さない。
解説:海水中は塩化物イオンを一定限度以上に含み、不動態皮膜が破壊されて孔食などの局部腐食が生じるため、オーステナイト系ステンレス鋼を腐食させます。
重要:不動態被覆に関する問題は過去に5回出題されてます。
問16.SUS304L、SUS316Lは耐粒界腐食性を改善するために、C量を低減したステンレス鋼である。
解答:正しい
解説:末尾のLはLow carbonの略である。
問17.ライニング材にガラスのフレークを混入させることで耐食性を向上させ、損傷を防止することができる。
解答:正しい
問18.11%以上のクロムを有するステンレス鋼は不動態皮膜を形成するが、鋭敏化によって耐食性を失う。
解答:正しい
解説:ステンレス鋼をある温度以上で一定時間以上加熱すると炭素がクロムと反応し、炭化クロムが析出する。これにより、不動態被膜を形成するのに必要なクロムの量が必要濃度以下となり耐食性を失うことを鋭敏化という。
重要:不動態被覆に関する問題は過去に5回出題されてます。
問19.液体窒素の容器にはオーステナイトステンレス鋼よりもアルミニウム合金のほうが適切である。
解答:正しい
解説:低温に対する靭性確保にはアルミニウムが適しています。
問20.アンモニアの合成装置にSUS304を使用することができる。
解答:正しい
解説:アンモニア合成で窒化の起こる箇所にはSUS304が使用される。
問21.土壌埋設パイプラインや海洋構造物の水没部への防食としてカソード防食を用いた。
解答:正しい
解説:カソード防食は電気防食法の1つであり、土壌埋設パイプラインや海洋構造物の水没部への防食として用いられる。
問22.流電陽極法は1箇所の陽極から広範囲の防食が可能である。
解答:誤り 流電陽極法→外部電源法
解説:流電陽極法(犠牲陽極法)は十分な電流が届く距離が短いため、多くの陽極を配置する必要がある。
問23.海水中の炭素鋼の電気防食は、有効ではない。
解答:誤り 有効ではない。 → 有効である。
解説:電気防食にはアノード防食法とカソード防食法があります。
重要:海水中の電気防食に関する問題は過去に2回出題されてます。
問24.高温高圧の鋼が、反応によって水素が発生し、鋼の脆化と割れが生じる現象が水素侵食である。
解答:誤り 鋼が、反応によって水素が発生し → 水素が鋼中に侵入して炭化物と反応し、発生したメタンガスが結晶粒界に蓄積し
解説:モリブデン鋼やクロムモリブデン鋼は耐水素浸食性に強いです。
重要:モリブデン鋼に関する問題は過去に5回出題されてます。