熱と仕事の過去問傾向
熱と仕事については、乙種機械の学識において近年、毎年出題される分野です。2012年からの過去の12年分から出題傾向をまとめました。熱と仕事については、8項目が複数回出題されていますが、比熱、仕事量、熱エネルギ-に関する内容が特に出題が多いです。単に用語やその内容に関する問題よりも比熱等は計算させる問題も多く出題されます。しっかりと覚えて解答しましょう。
項目 | 出題数 |
比熱 | 11 |
仕事量 | 9 |
熱エネルギー | 8 |
カルノーサイクル | 5 |
熱効率 | 2 |
内部エネルギー | 2 |
理想気体のエンタルピー | 2 |
その他 | 9 |
練習問題
ここでは、熱と仕事における基本的な用語や知識に関する問題を掲載しています。問1~6は過去に複数回出題された内容に関する内容です。問7~9は過去に1度出題されたことのある内容に関する問題です。問10は過去に出題されたことのない問題ですが、重要と思われる内容に関する問題です。
次の各問について、適切な語句や意味を答えなさい
問1.比熱容量の定義を答えよ。
解答:「物質の温度を単位温度辺り、単位重さ辺り上げるのに必要な熱量」
問2.熱効率の式を1つ表せ。η:熱効率、W:仕事、Q2:高温側の熱量、Q1:低温側の熱量、T2:高温側の温度、T1:低温側の温度
解答:
問3.比熱容量の式を表せ。比熱容量:c、熱量:Q、温度:ΔT、重さ:mとする。
解答:
問4.等温膨張、断熱膨張、等温圧縮、断熱圧縮の4工程を経る理想的なサイクルを何というか。
解答:カルノーサイクル
問5.熱機関から仕事へ変換する際に供給されるのは何か。
解答:熱エネルギー
問6.仕事量の定義を答えよ。
解答:「力」×「距離」
問7.体積一定における熱量Qと内部エネルギーΔUの関係を答えよ。
解答:Q=ΔU
問8.二原子分子の比熱比を答えよ。
解答:
問9.高温物体と低温物体を接触させると等温になるが、その逆が起らないことを何というか。
解答:不可逆過程
問10.熱力学における系を3つ答えなさい。
解答:「閉じた系(閉鎖系)」「開いた系」「孤立系」
系の状態は、温度、体積、圧力等の状態量で決まります。
閉じた系(閉鎖系)ではエネルギーの出入りのみあります。それに対し、孤立系では物資の出入りのみでなくエネルギーの出入りもない系のことをいいます。
問11.単位質量の液体を気化させるのに必要な熱量を何というか答えよ。
解答:気化熱(蒸発熱)
液体が気化する際には、体積が増加するので、外部に対して仕事を行う。
問12.物質の相変化にのみ使用される熱量を何というか答えよ。
解答:潜熱
問13.温度上昇また温度下降を伴う熱のことを何というか答えよ。
解答:顕熱
問14.状態量の定義を答えよ。
解答:系の状態だけで一意的に決まり、過去の履歴や経路には依存しない物理量
圧力、温度、体積、エントロピー、エンタルピーは状態量である。
仕事、熱は状態量ではない。
演習問題
次の各問いに対して正しいかどうか答えなさい。また、誤っている場合、誤りの部分を正しく直しなさい。
問1.5kPaの圧力で、断面積0.3m²のおもりを1m動かす仕事量は150Jである。
解答:正しい
解説:仕事Wは「力」×「距離」で表されます。
W = 圧力 × 断面積 × 距離 ここで5kPaは5,000 m-1・kg・s-2
= 5,000 m-1・kg・s-2 × 0.3m2 × 1m
= 150 m2・kg・s-2
= 150 J
重要:仕事量に関する問題は過去に9回出題されてます。
問2.質量10kgのおもりを3m持ち上げるときの仕事は、およそ30Jである。
解答:誤り 30J → 294J
解説:仕事Wは「力」×「距離」で表されます。
W = 10 kg × 9.8 m/s2 × 3 m
= 294 m2・kg・s-2
= 150 J
重要:仕事量に関する問題は過去に9回出題されてます。
問3.200MPaの圧力で、断面積0.1m²のおもりを圧力一定で0.3m移動させるとき、仕事量は6kJである。
解答:誤り 6kJ → 60 kJ
解答:仕事Wは「力」×「距離」で表されます。
W = 圧力 × 断面積 × 距離 ここで2MPaは2,000,000 m-1・kg・s-2
= 2,000,000 m-1・kg・s-2 × 0.1 m2 × 0.3 m
= 60,000 m2・kg・s-2
= 6 kJ
重要:仕事量に関する問題は過去に9回出題されてます。
問4.6MPaの圧力で、断面積0.1m²のピストンを2m動かす仕事量は1.2MJである。
解答:正しい
解答:仕事Wは「力」×「距離」で表されます。
W = 圧力 × 断面積 × 距離 ここで6MPaは6,000,000 m-1・kg・s-2
= 6,000,000 m-1・kg・s-2 × 0.1 m2 × 2 m
= 1,200,000 m2・kg・s-2
= 1.2 MJ
重要:仕事量に関する問題は過去に9回出題されてます。
問5.定圧比熱容量が10kJ/(kg・K)の気体10kgを圧力0.2MPa一定で加熱して温度を100K上昇させるには2MJの熱量が必要である。
解答:誤り 2MJ → 10MJ
解説:定圧変化なので圧力0.2MPaは今回計算に関係ありません。
熱量Qは比熱容量×重さ×温度なので
Q = c×m×ΔT
= 10kJ/(kg・K) × 10kg × 100K
= 10,000kJ
= 10MJ
問6. 定圧比熱容量(定圧比熱)1.0kJ/(kg・K)の気体0.3kgを圧力1MPa一定で加熱して温度を100℃上昇させるには30kJの熱量が必要である。
解答:正しい
解説:定圧変化なので圧力0.2MPaは今回計算に関係ありません。
熱量Qは比熱容量×重さ×温度なので
Q = c×m×ΔT
= 1.0kJ/(kg・K) × 0.3kg × 100K
= 30kJ
重要:比熱容量に関する問題は過去に11回出題されてます。
問7. 圧力10.0MPa一定で、50℃の気体1.0kgを150℃まで加熱するのに必要な熱量が160kJであるとき、この気体の定圧比熱容量は0.16kJ/(kg・K)である。
解答:誤り 0.16kJ/(kg・K) → 1.6kJ/(kg・K)
解説:c=熱量(Q)温度(ΔT) × 重さ(m)=JK・g
定圧変化のため、圧力10MPaは今回計算に関係ありません。
c = 160kJ ÷ (150 – 50)°C ÷ 1.0kg
= 1.6kJ/(kg・K)
重要:比熱容量に関する問題は過去に11回出題されてます。
問6. 比熱容量の比熱比が5/3である理想気体の定圧モル熱容量は、気体定数(モル気体定数)の3.5倍である。
解答:誤り 3.5倍 → 2.5倍
解説:マイヤーの関係式より、Cm,p – Cm,v=R、また、比熱容量の比の定義より
問9.熱機関に加えられた熱エネルギーをすべて仕事に変換することはできる。
解答:誤り できる。 → できない。
解説:トムソンの法則(ケルビンの法則)により、一つの熱源から正の熱を受け取り、これを全て仕事に変える以外に、他に何の変化もおこさないようにする熱力学サイクルは存在しないため、供給された熱エネルギーをすべて仕事に変換することはできない。
重要:熱エネルギーに関する問題は過去に8回出題されてます。
問10.可逆カルノーサイクルの熱効率は高・低熱源の温度だけで決まる。
解答:正しい
解説:熱源の熱力学温度をTH、低熱源の熱力学温度をTL可逆カルノーサイクルの熱効率をncとすると
nc = 1 – (TL/TH)で表される。
重要:熱効率に関する問題は過去に2回出題されてます。
問11.熱機関サイクルにおいて、内部エネルギーの変化はゼロのため、作動流体による熱量の変化は外部に行う仕事に等しい。
解答:正しい
解説:熱機関サイクルにおいては、内部エネルギー変化はゼロであり、2つの熱源の温度のみで熱効率は決まります。
問12.理想気体の温度を一定に保った状態で盲腸させると、内部エネルギーは変化しない。
解答:正しい
解説:理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まります。
重要:内部エネルギーに関する問題は過去に2回出題されてます。
問13.気体の断熱圧縮では、熱の出入りがないため、内部エネルギーは変わらない。
解答:誤り 変わらない。 → 変わる。
解説:断熱変化では熱の出入りがないため、Q=0であるが、気体が外部に仕事するため、内部エネルギーは変化する。
重要:内部エネルギーに関する問題は過去に2回出題されてます。
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