「孤立系のエネルギーの総量は変化しない」というエネルギー保存則です。これはどういうことでしょうか。この法則を理解するには2つのことを説明しなければなりません。
そもそも系とは何でしょうか。物理化学の世界では、直接考察の対象にするものを系といい、それ以外を外界といいます。
一方、エネルギーの世界では、体積、温度、圧力等を数値化して量として考察します。この体積、温度、圧力等を状態量と言います。
つまり、熱力学第一法則では、「他から影響されない系のエネルギー(状態量)総量は変化しない。」と言っています。
これを式で表すと
Q = U + W
Q:熱量、U:内部エネルギー、W:仕事
仕事とは「力」×「距離」で表されます。一方、内部エネルギーとは分子の運動エネルギーの総和です。
例としてぺちゃんこになったペットボトルにある水素をイメージしてください。このペットボトルを少し温めます。温められた水素は温度の上昇により動き始め、運動エネルギーが増加します。水素分子が動き始めるとぺちゃんこだったペットボトルが膨らみ始めます。(仕事をします)このペットボトルを含まらすことと水素分子が運動したエネルギーは全て熱ですといった内容です。
「孤立系の総エントロピー(有用な仕事をするために利用できない単位温度あたりの熱エネルギー)は決して減少することはない」という法則です。
この法則は、熱は高温から低温へしか移動しないということです。
エンタルピーとは
密閉された瓶の中に、水素を入れます。この瓶を温めるとどうなるでしょうか。水素分子は激しく運動します。しかしながら、瓶はペットボトルと異なり、膨らんだりしないため、仕事W=0です。そのため、定積変化では、Q = Uとなります。
圧力を一定にして、変化させた場合、どうなるでしょうか。圧力は一定なだけで、圧力がないわけではありません。そのため、熱を与えた場合、内部エネルギーも増加し、仕事もします。つまり定圧変化では、Q = U + W
では、密閉されたぺちゃんこのペットボトルの中にある水素に熱を与えない状況ではどうでしょうか。ぺちゃんこのペットボトルがいきなり膨らみだした場合、熱は与えられていないわけですから、内部エネルギ-が仕事ということになります。つまり、断熱変化では、0 = U + Wとなります。
熱力学第一法則の所でも述べているように、仕事とは「力」×「距離」で表されます。
では力とは何でしょうか。
力とは「重さ」×「加速度」で表され、一般にF(力) = m(重さ) × a(加速度)で表されます。
熱容量とは、「物質の温度を単位温度上昇させるために必要な熱量」を言います。
比熱容量とは、「物質の温度を単位温度辺り、単位重さ辺り上げるのに必要な熱量」を言います。
熱容量と比熱容量の関係は C=cm です。
上記から熱量を求める式は下記になります。
マイヤーの関係式
熱容量は定圧変化、定積変化によって異なります。それぞれCm,p と Cm,v で表され、理想気体の場合、Cm,p と Cm,v は次の関係があります。 (Rは気体定数)
Cm,p – Cm,v=R
定圧熱容量と定容熱容量の比(γ)を「比熱容量の比」と言い、下記で表されます。
γ=cp/cm=Cm,p/Cm,v
また、単原子分子、多原子分子では比熱容量γは次の通りです。
単原子分子 γ=53(=1.667)
2原子分子 γ=75(=1.4000)
カルノーサイクルは理想的な熱サイクルのことで、理論サイクルです。
高温熱源と低温熱源を利用して、等温膨張、断熱膨張、等温圧縮、断熱圧縮の4つの過程を繰り返し、熱エネルギーを動力に変換します。等温変化は外部との熱のやり取りがある状態、断熱変化は外部との熱のやり取りがない状態での膨張、圧縮を表し、図で表すと下図のような形になります