熱力学・気液平衡の計算については、乙種化学の学識にて出題される分野です。2012年からの過去の12年分から出題傾向をまとめました。この問題は、毎年出題されるわけではありません。しかしながら、出題される項目は多くなく、また、覚える計算式も容易なため、出題されたときはしっかりと解答したい分野です。
項目 | 出題数 |
エントロピー | 3 |
膨張係数 | 3 |
カルノーサイクル | 2 |
熱容量 | 2 |
ここでは、熱力学の計算の分野における基本的な計算に関する問題を掲載しています。問1〜4は熱力学に関する基本的な公式を確認する問題です。問5~8は過去に複数回出題された内容に関する内容です。
次の各問について、適切な語句や意味を答えなさい。また、計算問題については、計算過程も含めて解答しなさい。
問1.エントロピーΔSを熱量Q、温度Tを用いて表しなさい。
解答:
問2.カルノーサイクルにおける熱効率をQ2:高温側の熱量、Q1:低温側の熱量、T2:高温側の温度、T1:低温側の温度を用いて2通り表しなさい。
解答:
問3.体積V、温度Tの液体が温度ΔTだけ上昇し、体積ΔVだけ膨張した場合、体積膨張係数を表せ。
解答:
問4.一定温度において、体積Vの液体が、圧力Pから圧力ΔPだけ増加したとき、体積ΔVだけ増加したとすると、圧縮率kTを表せ。
解答:
問5.大気圧(101.3kPa)下において、温度200℃の液体の水90gを全量蒸発させて完全に同じ温度の蒸気にしたときの系のエントロピー変化はおよそいくらか。ただし大気圧下での水の蒸発潜熱は40.7kJ/molとする。
解答:0.43 kJ/K
問6.温度300℃の高熱源と温度50℃の低熱源の間で作動するカルノーサイクルの熱効率はおよそいくらか。
解答:0.44
問7.液化ガスを30℃で容器に気相部分がなくなるまで充てんした。 圧力が10MPa上昇するための温度上昇はおよそいくらか。 ただし、 容器の膨張はなく液化ガスの体積膨張係数は4.0 × 10-4K-1 圧縮率は0.4 × 10-9 Pa-1とする。
解答:10 K
問8.温度10°C、圧力0.1013 MPaの理想気体9gを、 圧力一定の条件で200℃まで加熱するのに必要な熱量は1.8kJであった。 この理想気体の定圧モル熱容量はおよそいくらか。ただし、この理想気体の分子量は18であり、定圧モル熱容量は一定とする。
解答:18 J/(mol・K)
定圧モル熱容量はQ = nCm, pΔT で表される。
Q:熱量、n:物質量、Cm, p:定圧モル熱容量、ΔT:温度変化
次の各問に答えなさい。
問1. 100℃の水200gの蒸発のエントロピー変化はおよそいくらか。 ただし、 100℃における水の蒸発熱は 40.7 kJ/mol とする。
解答:1.2kJ/K
解説:等温変化の可逆過程におけるエントロピー変化ΔSは、熱量変化をΔQとすると、下記の式で表される。
ΔQが水の蒸発に必要な熱量に等しいので、エントロピーΔSはn:物質量とλγ:蒸発潜熱から。
重要:エントロピー変化に関する問題は過去に2回出題されてます。
問2.温度300℃の高熱源と温度50℃の低熱源の間で作動する可逆カルノーサイクルの熱効率はおよそいくらか。
解答:0.44
解説:高熱源の温度をT1、低熱源の温度をT2とすると可逆カルノーサイクルの熱効率は
nc = 1 – (T2/T1)と表される。
T1 = 300℃ = 573K, T2 = 50℃ = 323 K なので
nc = 1 – (T2/T1) = 1-(323/573) = 1 – 0.5635 = 0.436 = 0.34
重要:カルノーサイクルに関する問題は過去に2回出題されてます。
問3.液化ガスを60℃で容器に気相部分がなくなるまで充てんした。 圧力が4.0MPa上昇するための温度上昇はおよそいくらか。 ただし、 容器の膨張はなく液化ガスの体膨張係数は3.0 × 10-4K-1、圧縮率は0.6 × 10-9 Pa-1とする。
解答:2K
解説:容器の内容積をV、この液化ガスの体膨張係数をβ、圧縮率をK、圧力変化をΔp、温度変化をΔt、体積変化をΔVとすると、
①、②からΔp = Δt (a/k)
よって
Δt = Δp (k/a) = 4MPa × (0.6 × 10-3MPa / 3.0×10-4K-1) = 2.0K
重要:圧縮係数に関する問題は過去に2回出題されてます。
問4.温度0°C圧力0.1013 MPaの理想気体11gを、圧力一定の条件で100℃まで加熱するのに必要な熱量は1.5kJであった。 この理想気体の定圧モル熱容量はおよそいくらか。ただし、この理想気体の分子量は44であり、定圧モル熱容量は一定とする。
解答: 60 J / (mol・K)
解説:理想気体の分子量が44であるからこの気体16gの物質量は,
n=11g/44 (g/mol) = 0.25mol である。
圧力一定、定圧モル熱容量一定から、Q = nCm, pΔT が成り立つ。
Cm,p = Q / (nΔT) = 1500J / (0.25mol × 100K)
= 60 J / (mol・K)
重要:熱容量に関する問題は過去に2回出題されてます。