1-1. 爆発限界値について
バージェス-ホイーラー(Burgess – Wheeler)の法則とは
飽和炭化水素に(CmHnで表される化合物)では、濃度Lと燃焼熱Qの積が、経験的に一定であることが知られています。式で表すと下記となります。
L:下限界濃度(vol%)、Q:燃焼熱(kJ/mol)、K:定数
この式自体は御覧の通り、非常に単純です。そのため、式さえ覚えておけば、解答は容易かと思いますが、一方で、出題頻度が多いわけではありません。そのため、いざ試験の際、忘れてしまいがちですのでしっかりと覚えましょう。
1-2. ルシャトリエの法則
爆発に関するルシャトリエ(Le Chatelier)の法則とは
ガスを混合させた際、その混合ガスの爆発下限界がいくつになるのかを成分ガスの爆発下限界と成分濃度の関係から推算する法則です。
L :混合ガスの下限界濃度(vol%)
Li:成分iの下限界濃度(vol%)
Ci:混合ガス中の成分iの濃度(vol%)
1-3. 不活性ガス希釈と三角図の活用
ある物質の爆発範囲を三角形ダイアグラムで表せます。この時、どれだけ希釈すれば爆発しないかといった問題が出題されます。ある物資Aの爆発範囲を基に解説します
1-3-1.三角形ダイアグラムの読み方
ある物質αについて下記のような爆発範囲と仮定します。赤●のA点ではどのような状態でしょうか。3つの物質が混合した状況です。ではそれぞれどれくらいの割合でしょうか。まず物質αを基に見ていきましょう。確認した物質が書かれた頂点を上にして、目盛は左側を読みます。この図において重要なことは頂点の左の目盛を読むことです。物質αの目盛は40ですので、物質αは40%ということになります。同様の目盛を読むとO2、CO2はそれぞれ40%、20%となります。
1-4. 爆発の影響
ホプキンソンの三乗根法則とは
R:爆発の中心から測定点までの距離
M:爆発物の質量
λ:爆風のピーク過圧の換算距離
燃焼速度・・・可燃性ガスと支燃性ガスを予混合した状態で燃焼したときに火炎面が未燃焼混合ガスに対して垂直に進む速度のことです。化学量論付近で最大になります。
水素―酸素の最大燃焼速度は300cm/s。また、燃焼速度の大きさに対する順番を答える問題もよく出題されます。
メタン < アセチレン < 水素
化学量論組成(完全燃焼組成)・・・可燃性ガスと酸素の混合比が総括化学反応式の係数比と等しい混合組成。最も激しい燃焼(爆発)となります。
発火温度・・・点火源がなくてもある温度を超えると火が付く際の温度のことを言います。
ヘキサン < アセチレン < ブタン < エチレン < プロパン < エタン < 水素 < メタン < アンモニア
炭化水素は炭素数が小さいほど、発火温度が高いです。
爆発下限界・・・ガスによる爆発が起こるのに最低限度の必要な濃度
爆発の下限界を知ることは、安全を考えるにおいて大変重要であり、ガスによって爆発下限界も異なります。爆発下限界が小さいということは、ガスの濃度が低い状態で爆発しやすいことを示し、非常に危険なガスと言えます。また、爆発下限界の大きさに対する順番を答える問題もよく出題されます。
ヘキサン < シラン < プロパン < アセチレン < エチレン < エタン < 水素 < メタン < 一酸化炭素 < アンモニア
上記は爆発下限界の順のすべてではないですが、出題されそうなものを記載しています。
最小発火エネルギー・・・爆発範囲内にある可燃性混合ガスを発火させるのに必要な最小のエネルギーをいいます。圧力の増大とともに著しく小さくなり、温度が高くなるほど小さくなり、発火の危険性が増すので注意が必要です。最小発火エネルギーが小さいということは、小さいエネルギーで爆発しやすいことを示し、非常に危険なガスと言えます。
また、最小発火エネルギーの大きさに対する順番を答える問題も良く出題されます。
二硫化炭素 < 水素 < アセチレン < エチレン < メタン < エタン < プロパン < ベンゼン < ブタン < アンモニア
消炎距離・・・爆発性混合ガスの中を伝播する火炎も、あまり細い管や狭い隙間を通り抜けることができません。この隙間の限界寸法を言います。化学量論組成付近で最も小さくなります。
二酸化炭素 < 水素 < アセチレン < 酸化エチレン < プロパン < エタン < メタン < ベンゼン
最大安全すきま(MESG)・・・・火炎を消炎できる最大のすきま
希釈効果・・・可燃性ガスの爆発危険性に対する最も効果的な対策。
窒素と比べると二酸化炭素はモル熱容量が大きいので冷却効果、希釈効果が大きい。
・爆発下限界の順番に関する問題は、過去に5回出題されています。
・発火温度に関する問題は、過去に4回出題されています。
・最小発火エネルギーに関する問題は、過去に3回出題されています。
・消炎距離に関する問題は、過去に2回出題されています。
3-1.爆発の種類と特徴
爆燃 ・・・火炎の伝播速度が音速以下の通常の爆発
爆ごう・・・気体の急速な熱膨張の速度が音速を超え、衝撃波を伴いながら燃焼する現象のことです。通常の爆発範囲の中にあって爆発範囲よりも狭いです。
※爆ごうだからと言って、どんなに細い管でも伝ぱするわけではありません。
爆ごう転移・・・通常の火炎が次第に加速し、高速の燃焼から爆ごうへと状態が転移することを言います。管の径が細い程、転移が起こりやすいですが、細すぎると、伝ぱ自体が起こりません。
爆ごう誘導距離・・・燃焼が爆ごうに転移するまでの距離を言います。爆ごう誘導距離を短くする方法(1)高い圧力、(2)燃焼速度が大きい、(3)管径が小さい
蒸気爆発(BLEVE)・・・加圧下で加熱された状態の液体があるときに、容器が破れたりして圧力が急に解放されると、気液平衡がくずれて突沸状態になって液体が爆発的に蒸発します。物理的な爆発です。
蒸気雲爆発・・・空気中に可燃性の液体の蒸気およびミストなどが白雲状に広がった状態で発火すると爆発する。混合ガスと液滴噴霧の共存する爆発
粉塵爆発・・・炭塵、小麦粉、プラスチックの粉、金属粉などの可燃性の細かい粉が空気中などに浮遊している状態で発火すると爆発する
高圧設備の破裂・・・高圧ガス設備が設備の脆弱性または設備の欠陥などが原因で、あるいは造作ミスなどで設計圧力以上の高圧を加えたため、内圧に耐えられなくなって急激に破壊し、内部の高圧ガスが爆音とともに噴出し、爆風などを生じる現象。
3-2.火炎の種類と特徴
拡散火炎 ・・・可燃性ガスと支燃性ガスが反応の場で混合しながら燃焼する
例:ライター、ろうそく、マッチ
予混合火炎・・・可燃性ガスと支燃性ガスがあらかじめ混合された状態で発火し燃焼
例:ブンゼンバーナー
伝播火炎 ・・・空気と混合した可燃性ガスor可燃性液体の蒸気、ミストor粉塵雲を伝播する燃焼
噴流火炎(ジェット火炎)・・・高圧のガスや液体などが空気中に勢いよく噴出しながら燃焼
例:塔、槽
プール火炎・・・可燃性液体がプール状に溜まった状態にあり、その液面状で燃焼
ファイアボール・・・大量に漏れ出した可燃性のガスなどに火がついて火炎となり、これが浮力によって空中に浮きあがり、大きな球になって燃えている火炎
3-3.発火源
発火とは、火が燃えだすことを言います。発火を起こすにあたり、単にライター等の火種を直接近づけることだけでなく、エネルギーを与えることで、燃えることがあります。
a. 電気機器による発火・・スイッチの開閉による火花、接点からの火花等
b. 静電気放電による発火・・異種物体の接触・引き離し、ノズルからの噴射、配管中を液体が流れるとき等
c. レーザー光による発火・・プラズマが発生することで着火します。
d. 断熱圧縮による発火・・ボンベのバルブの開閉、高圧気体が低圧気体へ流入等。
e. 高温物体との接触・・温度や高温物体表面の形状によって起こります。
3-4.連鎖反応
一般に記載される反応式は総括化学反応式と呼ばれています。一方で、実際の反応は分子同士が衝突して起こるのではなく、ラジカル(不対電子をもつ原子や分子、あるいはイオン)が衝突して起こります。例えば、水素と酸素から水ができる反応は下記のように考えられています。下記のそれぞれの式を素反応と言います。
OH + H2 → H2O + H (1) 連鎖成長反応
H + O2 → OH + O (2) 連鎖分岐反応
O + H2 → OH + H (3) 連鎖分岐反応
H + O2 + M → HO2 + M (4) 連鎖停止反応
連鎖成長反応・・1個のラジカルから1個の原子を生成する反応
連鎖分岐反応・・1個の原子から2個のラジカルを生成する反応
連鎖停止反応・・1個の原子から1個のラジカルを生成する反応
熱発火理論・・発熱速度が放熱速度を上まわることで内部の温度が継続的に上昇し、ついには発火するという理論
連鎖発火理論・・活性化学種が増加する状況であれば、発火し、減少する状況であれば、発火しないという自然発火の理論
3-5.爆発に関連する知識
爆発範囲・・・爆発を起こす上限の可燃性ガスを爆発上限界濃度、下限の濃度を爆発下限界濃度といい、この範囲を爆発範囲と言います。爆発範囲は一般に、温度が上昇すると広くなります。
3-6.分解爆発性ガス
アセチレン、ヒドラジン、オゾン、エチレンオキシド、エチレン、ゲルマン、一酸化窒素
・爆ごうに関する問題は、過去に3回出題されています。
・連鎖反応に関する問題は、過去に2回出題されています。
・発火源に関する問題は、過去に2回出題されています。