理想気体の状態変化 練習問題・演習問題 乙種機械 学識

理想気体の状態変化の過去問傾向

 理想気体の状態変化については、乙種機械の学識において近年、毎年出題される分野です。2012年からの過去の12年分から出題傾向をまとめました。理想気体の状態変化については、下記表では、11項目が複数回出題されており、出題範囲の広い分野と言えます。しかしながら、関係の深い項目もあり、2つの項目を一緒に覚えることが可能な内容もあるため、しっかりと覚えて解答したい分野です。理想気体とタイトルに記載がありますが、状態変化に関する問題の方がかなり多く出題されます。

項目出題数
ボイル・シャルル9
定圧変化5
断熱圧縮5
等温変化5
比熱容量5
断熱変化4
エンタルピー3
断熱圧縮・等温圧縮2
圧力・体積・温度2
内部エネルギー2
温度一定2
その他4

練習問題

 ここでは、理想気体の状態変化分野における基本的な用語や知識に関する問題を掲載しています。問1~9は過去に複数回出題された内容に関する内容です。問10は過去に出題されたことnない問題ですが、重要と思われる内容に関する問題です。
 次の各問について、適切な語句や意味を答えなさい。

問1.「温度一定条件における気体の体積は、圧力に反比例する」言われるのは何という法則か。

解答:ボイルの法則

問2.「圧力一定条件における気体の体積は、温度に比例する」と言われるのは何という法則か。

解答:シャルルの法則

問3.圧力が一定の状態における内部エネルギーU、熱量Q、仕事Wの関係式を答えよ。

解答:Q=U + W

問4.断熱圧縮では温度はどうなるか。

解答:下がる

問5.定積変化における仕事量を答えよ。

解答:仕事W=0

問6.等温変化における内部エネルギー変化を答えよ。

解答:内部エネルギーU=0

問7.断熱変化における熱量を答えよ。

解答:熱量Q=0

問8.1molの気体に対し圧力、体積、温度の3つの状態量のうち任意の2つを定めれば残りの1つが定まる法則を何というか。

解答:ボイル・シャルルの法則

問9.気体の状態変化において、完全な断熱変化ではなく、その中間的な変化を何というか。

解答:ポリトロープ変化

問10.理想気体の状態方程式を表せ。

解答:PV=nRT
P:圧力(Pressure)(Pa)、V:体積(Volume)(m3)、n:モル数(mol)、
R:アボガドロ定数 8.314(J⋅K−1⋅mol−1)

問11.ドルトンの分圧の法則の定義を答えよ。

解答:混合気体の全圧は、成分気体の分圧の総和に等しい。

演習問題

問1.分子量が44の気体の温度が27℃で、容器内の圧力が7.5MPaであった。この時の容器内の気体の密度d(g/L)を求めなさい。

密度d=質量(g)/体積(L)
理想気体の状態方程式より、

圧力P=7.5×106(Pa)、分子量M=44(g/mol)、R=8.31×103(Pa•L/K•mol)、T=300(K)
上の各々の値を代入して計算すると、

= 132.306
解答:密度d=132 (g/L)

問2.温度27℃、圧力1.0MPaで気体の密度が1.5kg/m3であるとき、そのモル質量はいくらか求めなさい。

密度より
にP=1.0×106Pa、T=8.314×103(Pa•L/K•mol)、T=300(K)、d=1.5(g/m3)を代入して
M = 1.5 × 8.314×103 ×300 ÷ 1.0×106
 = 3.7413
解答:3.74g/mol

問3.圧力一定下、0℃の気体を1092℃まで加熱すると、体積はおよそ5倍になる。

解答:正しい
解説:圧力一定における体積、温度の変化はシャルルの法則に従います。0℃は273K、1092°Cは1365Kなので、シャルルの法則より、0°C、1092℃における体積をそれぞれV1、V2とすると

問4.温度を30℃に保った状態で、圧力を0.1MPaから10MPaに加圧すると体積は2倍となる。

解答:誤り 2倍 → 100倍 
解説:温度一定における圧力、体積の変化はボイルの法則に従います。0.1MPa、10MPaにおける体積をそれぞれV1、V2とすると

問5.理想気体の混合ガスでは、各成分気体の分圧はそれぞれの物質量(mol)に比例するので、それぞれの物質量と全圧がわかれば分圧もわかる。

解答:正しい
解説:分圧とは各成分気体が単独で、混合ガスと同温度、同体積で存在するときに示す圧力のことでドルトンの分圧の法則に従います。

問6.大気圧下で水を加熱するとき、水の飽和蒸気圧が大気圧に等しくなる温度が100°Cで、このとき沸騰が始まる。

解答:正しい
解説:液体の蒸気圧は温度の上昇と共に増加する。蒸気圧が外圧(液体の表面にかかる圧力)と等しくなると、液体内部に気泡が発生し沸騰します。

問7.等温圧縮では、気体に加えた仕事量と内部エネルギーは等しい。

解答:誤り 内部エネルギー → 気体の熱量
解説:温度一定における変化では、内部エネルギーUが変化しないため、U=0です。

問8.等温変化では、気体の内部エネルギーは変化しないため、気体は仕事を行わない。

解答:誤り 気体は仕事を行わない → 気体がした仕事は熱に変化する
解説:等温変化では気体がした仕事と熱量の変化が等しいです。そのため、等温変化で内部エネルギーの増加といった内容は基本的に誤りです。一方で気体が仕事を行わないという内容も誤りです。

問9.断熱圧縮では、気体の仕事量と気体のエンタルピー増加量が等しい。

解答:誤り エンタルピー増加量が等しい → エンタルピー増加量は等しくない
解説:エンタルピーの増加量ΔHは、ΔH = Δ(U + pV) であるため、気体がした仕事量とは等しくありません。

問10.断熱変化では、温度は変化しない。

解答:誤り 変化しない。 → 変化する。
解説:気体と外部との間に熱の出入りがないため、熱量Qは変化しませんが体になされた仕事の分だけ内部エネルギーが増加し、温度は上昇します。
1molの気体を断熱圧縮するとき、圧縮に要する仕事は気体の種類が変わっても同じである。

問11.圧力一定で気体を加熱して温度を上昇させた場合、加熱に要する熱量と気体のエンタルピー増加量が等しい。

解答:正しい
解説:圧力一定のため、熱を加えると、内部エネルギー変化と仕事になります。また、エンタルピーとは、気体への熱量の変化です。

問12.ある気体1molに熱量を加えるとき、加える熱量が同じであれば、定圧変化よりも定容変化のほうが温度の上昇は大きい。

解答:誤り 大きい → 小さい
解説:加える熱量は気体の物質量 × モル熱容量 × 温度変化で表されます。また、モル熱容量は、定圧モル熱容量 > 定容モル熱容量のため、加える熱量が同じ場合、温度は定容変化のほうが高くなります。

問13.体積10m3の気体を1m3に圧縮するとき、断熱圧縮よりも等温圧縮のほうか圧縮後の圧力が高くなる。

解答:誤り 高くなる → 低くなる
解説:圧力をp、体積をV、圧縮前後の状態をボイルの式を用いて表すと、等温ではp1V1=p2V2であるから
断熱圧縮では比熱容量の比をγとするとP1V1γ = P2V2γ であるから

問14.1molの気体に対して温度、圧力、体積の3つの状態量のうち任意の2つが決まれば、残りの1つが決まる。

解答:正しい
解説:状態量とは、系の状態だけで一意的に決まり、過去の履歴や経路には依存しない物理量であり、圧力、体積、温度とも状態量です。

nerima9worker

高圧ガス製造保安責任者試験の研究をしているガス+α 産業ガスの会社に勤務している現役のエンジニアです。 2022年1月から高圧ガスの試験問題・検定問題を研究しています。 平成25年(2013年)の問題から現在までの出題傾向を踏まえオリジナルの類題を掲載しています。

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