工場で使用する金属等の材料は時間の経過ととも劣化します。しかしながら、その劣化は単に時間経過のみで劣化するわけではなく、使用方法や使用環境によって起こります。腐食とは、固体材料が環境によって純化学的反応または電気化学的反応によって変質破壊される現象をいいます。
1) 均一腐食
腐食環境にさらされている全表面がほぼ均一に腐食する場合に言います。
2) 異種金属接触腐食
電解液のような腐食環境下で異なる種類の金属が接触し電子電導したときに、片方の金属の腐食が促進される現象を言います。
3) 材料の不均一による腐食
同じ金属であっても、局所的に材質や表面状態が異なる場合、異種金属接触腐食の場合と同様にマクロ腐食電池が形成され、⊖極となる部分が選択的に腐食します。
4) 通気差腐食
酸素濃度の差によって起こる腐食で、通気差電池を形成した環境で、起きる腐食です。
5) 孔食
表面が局部的に点、または孔状に深く侵食される現象です。炭素鋼の場合、通気差腐食であることが多く、ステンレス鋼の場合、塩化物イオンによって局所的に不動態皮膜が破壊され、その部分がアノード反応となり、起こります。
6) すき間腐食
塩化物環境にあるステンレス鋼やアルミニウムおよびアルミニウム合金等の不動態皮
膜を形成する金属が、接触していたり、異物が付着していたりすると、接触面や付着物との間に形成される狭いすき間部に侵食を受けます。
7) 粒界腐食
金属材料の結晶粒界※5だけが選択的に腐食する現象を言います。局部腐食の一種で、結晶粒界に沿って浸食が進み、結晶粒が脱落することもあります。
8) 脱成分腐食
金中の特定の成分が選択的に溶出する腐食形態を言います。選択腐食が生じた合金は、表面が変色するなどの外観変化は生ずるものの、あたかも浸食を受けていないように見えることが多いです。しかし、引張強さや伸びは著しく低下しているため、外力により破断しやすくなります。
9) 応力腐食割れ
引張応力を受けている金属や合金が、その応力が引張強さ以下であっても、時間の経過によって起こる現象を言います。
10) ハロゲンガス腐食
塩素や塩化水素等のハロゲンガスは酸性が強く、高温下では特に金属を腐食します。塩素ガス中では炭素鋼は約200°C、SUS304は約300°Cが耐用温度です。
11) 水素浸食
水素は反応性が高く、高温高圧下では、水素が鋼中に侵入し、鋼中の炭化物(セメンタイト)と反応して鋼を脱炭させ、メタンガスを生成します。このとき発生する水素によって、鋼に微細なき裂を生じる現象を言います。
12) 浸炭・脱炭
浸炭とは表面層の硬化するため炭素を添加する処理のことで、焼入れ・焼戻しによって硬化させます。
※5 結晶粒界 一般の金属は、多くの結晶が集まってできており、結晶粒子と結晶粒子が接する境界にあたる面を言います。
腐食によって起こる劣化や破壊が起こるのを防ぐのに防食があります。防食とは、金属の腐食を防ぐことを言います。
1) 被覆防食
①有機被覆
有機被覆のほとんどは塗装による方法です。下塗り、中塗り、上塗り等、環境に適した方法が採用されます。塗布や補修が簡単であり、費用が安いですが、耐候性・耐久性にやや劣ります。
また、有機ライニングによる防食方法があります。有機ライニングとしては、ポリエチレン、ウレタンエラストマー、エポキシなどがあり、対象物に対し押出被覆、貼付け、塗装することで腐食を防ぎます。
②金属被覆
金属被覆には2種類の方法があります。1つは、対象の金属より卑な金属を用いることで対象の金属が腐食することを防ぎ、代わりに卑な金属が腐食されます。もう1つは湿食環境において腐食されない金属で覆うことで腐食されるのを防ぎます。
2) 電気防食
電気防食とは、金属に電気を流すことで、腐食の起こらない防食電位に変化させる防食法です。
①流電陽極法(犠牲陽極法)
流電陽極法は対象物となる金属を卑な金属に接続する方法です。これらの金属はイオン化傾向が大きいため、対象物となる金属との間の電位差を利用して防食電流を発生させることで腐食するのを防ぎます。
土壌中や海水中等では被覆物の更新が難しいため、防食に用いられる被覆物には耐久性が求められます。そのため、耐久性の高い金属が用いられます。炭素鋼には土壌中ではマグネシウム、海水中では亜鉛やアルミニウムが用いられます。
②外部電源法
直流電源を用い、適当な金属を陽極として用い、防食対象を負極として通電することで腐食を防ぐ方法です。