塔に起こる異常現象
飛沫同伴(エントレイメント)
精留塔、吸収塔、蒸発缶等で、微小液滴が蒸気または気体によって上のトレイ(上段)に運ばれる現象で、段効率低下※1になります。
※1 段塔形式の気液、液々接触装置において、各段を去る気体または液体が熱力学的平衡にあるとした場合、この段を理想段と言います。
溢汪現象(フラッディング)
飛沫同伴がさらに加速すると、ついには液が流下しないようになり、液のすべてが上段に運ばれる現象です。塔底引抜量が減少して運転が困難になる可能性があります。
脈動
蒸留塔等の段(トレイ)から、蒸気が断続的に吹き出す現象を言います。
ブローイング
塔の液量が少ない場合等に、蒸気によって液が吹き飛ばされる現象です。段効率低下になり、運転が困難になる可能性があります。
ダンピング・ウィーピング
塔での蒸気量が減少すると、トレイの孔(穴)から段液が漏れて下降する現象です。多孔板トレイでの激しい液降下をダンピング、軽度の液降下をウィーピングと言います。
加熱炉、反応器に起こる異常現象
ホットスポット・・・加熱炉において、局部的に過加熱が起こることです。触媒が不均一に充填されている場合に起こりやすく、ホットスポットによって、強度が低下して破壊する恐れがあります。
ポンプで起こる異常現象
空引き現象・・・ポンプケーシング(ポンプの内部)や吸込み配管に液体がない状態で運転することを言います。
原因
①液体の気化
②吸込み側の詰まり(ストレーナの詰まり等)
③バルブの開度不良(開け忘れ)
③吸込み側の圧力が低下
貯槽に起こる異常現象
ロールオーバ・・・低温、低密度の 液化ガス(LNG等) が残っている貯蔵タンクに、高密度の液化ガスを充填した場合、両液化ガスは混合せず2層になることを言います。貯槽に温度の高い液体が残留している場合、温度の低い液体を下部から注入することでも発生します。
その他の異常現象
霜着き・・・表面に空気中の水蒸気が凝縮し氷結して霜状に付着する現象です。
ウォータハンマー・・・配管のバルブを急激に閉止すると液体の慣性力が運動エネルギーに変化して配管、バルブに衝撃を与える現象です。
運転上の注意
バルブ操作
バルブを急に閉止すると、配管等に衝撃が起こり、ウォータハンマーが起こることで破損につながります。
衝撃の大きさは、閉止するバルブの径、上流側配管の長さ、流体の流速・質量にほとんど比例し、バルブの閉止時間に反比例するため、バルブの閉止時間は十分に時間をかけて行うことが必要です。
ハンドル廻しの使用
バルブ開閉の際に大きな力が必要な場合、ハンドル廻しを使用することがあります。その場合、開閉に必要な標準(制限)トルクを確認し、トルクにあった長さのハンドル廻しまたはトルクレンチによって操作する必要があります。
地震発生時の緊急停止システム
液面制御システム→液面の揺動(スロッシング)の影響によって、運転に支障をきたす可能性があります。
安全弁の元弁
安全弁は圧力が許容値より大きくなった場合に圧力を放出する役割です。元弁が閉止されていると、圧力が放出されません。そのため、正常に作動するように、運転中、常に開とし、施錠や封印を行うことで不用意に操作されないようにする必要があります。
保護具の使用
・酸素欠乏症への対策
空気呼吸器(酸素呼吸器) | 送気式マスク |
送気式マスクに比べて行動は比較的自由であるが、容器に充填されている空気(酸素)量により時間的な制約を受ける | 作業場所とは別の場所から空気を供給する道具。空気呼吸器に比べて機動的ではないが、使用時間の制約を受けない。 |
毒性ガスへの対策
防毒マスクとは、作業中の毒性ガスの吸引を防ぐために着用する保護具のことです。面体と吸収缶で構成されており、隔膜式防毒マスクが一般に良く用いられます。吸収缶には、吸収量に限界があるため、高濃度雰囲気になる場合、隔膜式防毒マスクは使用できません。高濃度時は、空気呼吸器を用います。
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