防災設備にはガスの漏えい等、直接的な被害を抑える一次災害に対する設備と、漏えいによる火災の拡大を防ぐ等、二次災害を防ぐものがあります。ここでは主に二次災害を防ぐための防災設備について記載します。
可燃性ガスに対する対策 → 防消火設備
(1)水噴霧装置
対象設備に対し固定された噴射ノズル付き配管により水を噴霧する装置をいい、当該対象設備の表面積 1m3 につき 5L/min 以上の水量を噴霧することができるもの
(2)散水装置
対象設備に対し固定され孔あき配管または散水ノズル付き配管により散水する装置をいい当該対象設備の表面積 1m3 につき 5L/min 以上の水量を散水できるものであること。
(3)固定式放水銃
対象設備に対して固定して設置されたものであって、放水ノズルの筒先圧力が0.35MPa以上であり、かつ、放水能力が 400L/min 以上のものであること。
(4)移動式放水銃
対象設備に対して搬入してホースにより消火栓に直結するものであって、放水ノズルの筒先圧力が 0.35MPa 以上であり、かつ、放水能力が 400L/min 以上のものであること。
(5)放水砲
消防車に搭載したもの、動力車によりけん引するもの又は対象設備に設置して使用できるも
のなどであって、放水能力が 1900L/min 以上のものであること。なお、消防車または適当に配備された放水塔などであって、放水砲と同等以上の効果があると認められるものについては放水砲とみなす。
(6)消火栓
屋外に設置され、かつ、ホース、筒先、ハンドルなどの放水器具を備えたものであって、放水ノズルの筒先圧力が 0.35MPa 以上で、放水能力が 400L/min 以上のものであること。
重要なことは上記の内容ではなく、防火設備として水噴霧装置、散水装置、固定式放水銃、移動式放水銃、放水砲、消火栓の6つがあるということです。
過去10年間で細かい内容が出題されたことはありませんが、今後出題される可能性はあるかと思います。
温度の上昇 → ガス貯蔵設備の爆発防止等 → 冷却装置
(1)冷却用水噴装置・散水装置は固定した装置で、貯槽に附属する液面計、バルブなどを全表面に水を放射できるもの。
(2)消火栓は外面から40m以内に、貯槽に対していずれの方向からも放水できるもの
(3)支柱の温度上昇防止措置 高さ1m以上支柱に対して、厚さ50㎜以上の耐火コンクリートまたはこれと同等以上の耐火性能を有する不燃性の断熱材で被覆する。
液化ガスの漏えい、高圧ガスの拡散 → スチームカーテン、防液堤、防火壁
(1)スチームカーテン
法律的には「水蒸気又は水その他空気、窒素ガスを噴射するものであって、漏えいしたガスが加熱炉等に流入することを遮断できるもの」をいいます。
特徴
①ガスの流れの遮断、ガスの希釈、上空への拡散の効果がある。
②一般に配管に上向きノズルを設け、カーテン状にスチームを噴霧する。
(2)防液堤
設備・装置から油や薬品等が漏れ出した際に、設備や装置の周囲の限られた箇所から漏れ出て行ってしまうことを防止する為のものをいいます。
設置容量
貯槽の貯蔵能力に相当する容積以上の容量が必要です。つまり、すべて漏えいしても防ぎきるためです。
防液堤の材料
鉄筋コンクリート、鉄骨・鉄筋コンクリート、金属、土およびこれらを組み合わせたものです。
(3)防火壁
火災時に急激に火が広がるのを防ぐために設けられた、耐火構造の壁のことです。火気を取り扱う施設と距離を確保できない場所の措置です。
設置基準
高さ 2m以上で製造設備又は貯蔵設備等と火気を使用する場所との間の迂回水平距離を8m以上とする必要があります。
可燃性ガスの燃焼処理 → フレアースタック
フレアースタック
設備・装置で使用した際に余ったガスを焼却することで無害化し、処理する設備です。
(1)エレベーテッドフレアー
高所で焼却を行う塔型。スチームノズル部にマフラーの取り付けます。スチーム吸い込み量を増加させると空気が吸引され燃焼効率が向上するとともに、水性ガス反応により、黒煙の発生が抑制できます。水素が含まれている場合、火炎の安定域が広くなります。
問題点
逆火現象:火口、吹管の中を火炎がガス供給側へ戻る現象です。
燃焼速度の大きいガス → 逆火と浮上がりが起こりやすい
逆火防止:ドライシール、水封および不活性ガスによるパージ
(2)グランドフレアー
地上で焼却する燃焼型
焼却炎の安定
燃焼されるガスの流速がガス固有の燃焼速度に比べて過大になると火炎が吹き消える流速がガスの燃焼速度より過少になる
問題点
吹き消え現象:放出するガスの流速が、ガス固有の燃焼速度より課題になると、火炎吹き消え現象が起こる。
対策:ガス流速が燃焼速度より大きくかつガス流速がマッハ0.2秒になるよう設計
緊急の放出 → ベントスタック
ベントスタック
緊急時に移送したガスを放出するもので特徴や仕様は下記
①放出されたガスの着地濃度が許容濃度以下となるように十分な高さにする。着地濃度を小さくするためにはスタック径を大きくする。ガス流速を大きくして空中に良く分散させる。
②着火を防止する措置を講じる。静電気or落雷に対する対策や消火できるための措置が必要
操作ミスの防止 → インターロック機構
インターロック機構
ある一定の条件が整わないと他の動作ができなくなるような機構のことをいいます。主に誤操作による事故の防止や適正な手順以外による操作が行われるのを防止する目的として、多くの設備に導入されています。
接触燃焼式・・・白金線コイルに活性触媒の検知素子と不活性物質の補償素子によりホイートストンブリッジを組んだものです。
原理:可燃性ガスが検知素子に接触するとその表面で接触燃焼反応が起こり、燃焼熱による温度上昇により、白金線コイルの電気抵抗値が増加、電圧出力が発生することで測定可能です。エアーミキサを取り付けて測定します。
半導体式(セラミック式)・・・加熱された金属化合物の(SnO2、ZnO)に可燃性ガスが触れると可燃性ガス濃度の増加により金属酸化物の電気抵抗値が変化することで測定します。特徴としては、不活性以外のガスが原理上検知可能で低濃度のガスの検知にも有効です。
定電位電解式・・・一定の電位に保たれた電極上で検知対象ガスを電気分解し、その時に発生する電流をガス濃度として検知します。
一酸化炭素、硫化水素の検知に良く用いられます。
電量式(クーロメトリ)・・・電圧のある電極間に溶液を満たし、溶液とガスが反応した際に流れる電流によって測定する検知器で、毒性ガスの検知に有効です。
隔膜イオン電極式・・・電解液で満たされた容器に、気体透過膜を検知電極と比例電極が設置されており、気体透過膜を透過したガスがイオン化し、これによって生じた起電力を測定してガス濃度を検知するもので毒性ガスに有効です。
ガルバニ電池式・・・作用極に貴金属、対極に卑金属が設置された定電位電解式検知器の1つです。酸素が電解駅に溶解すると還元電流が発生し、これを測定することで酸素濃度を測定できます。ガルバニ電池式は酸素の測定に用いられます。
検知器の使用例
ガス検知器の種類 | ガスの種類 |
低電位式 | 硫化水素、塩素、亜硫化ガス、一酸化炭素 |
電量式 | 硫化水素、塩素、亜硫化ガス |
半導体式 | 硫化水素、一酸化炭素、アクリロニトリル、二酸化硫黄 |
隔膜イオン式 | 塩素、アンモニア、シアン化水素 |
カルバニ電池式 | 酸素 |
ガスには毒性のものがあり、使用したガスを適切に処理しなければ、人体に影響を及ぼすものや環境に影響を及ぼすものがあります。そのため、ガスを適切に処理する設備や万が一漏えいした場合に対処する必要があります。
毒性ガスの処理
除害剤 | 毒性ガス |
苛性ソーダ水溶液 | 塩素、ホスゲン、硫化水素、亜硫酸水素、シアン化水素 |
炭酸ソーダ水溶液 | 塩素、硫化水素 |
石灰乳(消石灰) | 塩素、ホスゲン |
大量の水 | 亜硫酸水素、アンモニア、酸化エチレン、クロルメチル |