気化熱、顕熱、潜熱
物質が状態変化する時には熱が発生しやすい。そのため、その変化する時の熱にそれぞれ名称がついています。
気化熱・・単位質量の液体を気化させるのに必要な熱量をいいます。
液体が気化する際には、体積が増加するので、外部に対して仕事を行います。
顕熱・・・温度上昇また温度下降を伴う熱のことをいいます。
潜熱・・・物質の相変化にのみ使用される熱量をいいます。
ルシャトリエの原理
1884年、フランスのルシャトリエが可逆反応において下記の法則を提唱しました。
「長期間平衡状態にあるシステムが濃度、温度、体積、または圧力の変化にさらされると、(1)系は新しい平衡状態に変化し、(2)この変化は適用された変化を部分的に打ち消します。」
上記の法則は下記3つの変化が起きた際に当てはめることができます。
3つの変化
3つの変化が起きた際、それにより反応は反応物側か生成物側のどちらかに進みます。ルシャトリエの原理からはその変化の結果について問題が出題されます。
例としてアンモニアの合成・分解式を用いて説明します。
1N2 + 3H2 ⇄ 2NH3 + 92kJ
※N2の前の1は数が分かるようにあえて記載しています。
①濃度変化
濃度を変化させる。つまり、平衡状態にある上記の反応式に窒素を増やすとどちらに反応が進むでしょうか。反応は正反応が進みアンモニアの生成が増加します。
一方、平衡状態の上式にアンモニアを加えるとどちらに反応が進むでしょうか。先程と逆で、逆反応が進み、窒素、水素の濃度が増加します。
つまり、可逆反応においてある物質の濃度を増加させるとその物質の濃度は減少し、反応が進むことで、増加させていない側の物質の濃度が増加します。
②圧力変化
圧力を増加させるとどちらに反応が進むのか。上記の反応であれば、逆反応が進み、圧力を減少させると正反応が進みます。
圧力が増加すると分子の数が減少する方向に平衡が移動します。つまり、下記の式では
1N2 + 3H2 ⇄ 2NH3 + 92kJ
左辺 = 1 + 3 = 4、右辺 = 2
左辺の方が分子の数が多いので、分子の数が減少する方向は分子の数が少ない右辺へと平衡は移動します。
③温度変化
一般に「温度を上昇させると、吸熱反応が進み、温度を減少させると発熱反応が進む」
ここで、下記の反応は発熱反応でしょうか。それとも吸熱反応ででしょうか。
N2 + 3H2 = 2NH3 + 92kJ
答えは、発熱反応です。一般に「反応物の化学エネルギーの総和が生成物の化学エネルギーの総和より大きいときは、発熱反応。反応物の化学エネルギーの総和よりも生成物の化学エネルギ―が大きいときは、吸熱反応」と言われます。
N2 + 3H2 = 2NH3 + 92kJ
この式を「N2 + 3H2」を300kJ、「2NH3」を208kJとすると
300kJ = 208kJ + 92kJ
となります。窒素と水素を反応させると92kJ熱を放出して208kJのアンモニアになると言えます。つまり、+92kJは「N2 + 3H2」の方が化学エネルギーが大きいため、熱を発して、化学エネルギ-の小さいアンモニアになることを指します。
一方、「N2 + 3H2」を208kJ、「2NH3」を300kJ、+92kJが-92kJだった場合、同でしょうか。
208kJ = 300kJ - 92kJ
この場合、窒素と水素の化学エネルギ-の方が小さいため、熱を吸収して、化学エネルギ-の大きいアンモニアになることを意味します。
④触媒添加
先ほど、3つの変化と記載しながら、4つ目の項目を記載しています。4つ目の触媒添加は平衡が移動しないからです。一般に触媒は反応促進剤と言われ、反応が早く進むものの、平衡状態に達した反応に触媒を加えても、反応がどちらか一方に進むことはありません。
反応熱を求める問題
化合物を燃焼した場合、熱が発生します。その熱のエネルギーはどのくらいなのかを求める問題がたびたび出題されています。この反応熱を求める際にエンタルピー(←わかりずらい)という概念を用いて計算します。
この問題は比較的容易で、出題パターンも似たようなものが多いため、得点源にしたい問題です。
反応熱を求めるためにはまず、反応式が書けるようにならなければなりません。反応式の書き方は、下記ブタン燃焼の例題を元に解説します。
例題1
ブタン(C4H10)の標準生成エンタルピーを148kJ/molとしたとき、ブタンの燃焼熱(Q)を求めよ。ただし、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)の標準生成エンタルピーをそれぞれ、394kJ/mol、286kJ/molとする。
燃焼熱を求める問題では、まず最初に反応する物質(上記例ではブタン)の分子式(C4H10)がわからなければなりません。反応する物質が分かれば、それを用いて反応式を書きます。
C4H10 + 13/2O2 → 4CO2 + 5H2O
この問題を解く際のポイントは、問題文に記載されている反応物と生成物を用いて反応式を書くことです。生成物(CO2とH2O)の数量は反応物の数量から回答することができます。
生成物の二酸化炭素は反応物の炭素(C4)の数量そのままの数字です。一方、水の数量は反応物の水素(C10)の半分です。酸素の数量は二酸化炭素、水の数量が決まってからの掛け算で求められます。
酸素の計算:(4×2+5)÷2=13/2
燃焼問題の場合、丙種化学特別科目試験の過去10年で出題された問題の生成物は、二酸化炭素、水しか出題されていません。なぜなら炭化水素の燃焼問題が多いからです。この2つ以外が生成物だったとしても、問題文に記載されているため、生成物がわからないということはないかと思います。
次は実際に反応熱を求めます。
反応熱(ΔQ) = -エンタルピー(ΔH°f)という式が成り立ちます。
そのため、反応の標準エンタルピー(以下ΔH°fと記載する)がわかれば、反応熱が求められます。
ΔH° = (生成系のΔHf°の総和) – (原形のΔHf°の総和)
が成り立ちます。
結局のところ、どう計算するのかですが、ここでも問題文にヒントが記載されています。
それは問題文に記載されているΔH°です。
生成系のエンタルピーは二酸化炭素、水のことを指し、原形はブタンを指します。
そのため計算式は
ΔH° = 4 ×(-394) + 5 ×(-286) -(-148)
= -3,154
最初に作成した反応式が、エンタルピーを求める際に生きます。問題文に記載されたそれぞれのエンタルピーと反応式の数量を掛け、生成物から反応物を引いたら求められます。
ワンポイント 燃焼反応で出てくる酸素は、単体のため0kJ/molのため計算上は関係ない。
ΔG = -ΔH° = -3,154(kJ/mol)
最後に+、-を逆にするのを忘れないでください。
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